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前田建設が八代市庁舎で談合「ゼネコンのDNA」は企業改革で消えるか

 長年の取材経験から、企業にはDNAがあると考えています。創業者から新たな経営者に代替わり、従業員が世代交代しても創業以来、生き続けるDNAが「企業らしさ」を編み出し、企業風土となって継承を迫ります。

 ゼネコンのDNAは何か。たとえ違法とわかっても突き動かされるように談合に走ってしまう麻薬を生み出す源ではないでしょうか。

ゼネコンにとって談合は麻薬

 前田建設工業が再び、熊本県八代市が発注した新庁舎建設工事をめぐる談合事件で登場しました。警視庁と熊本県警は5月7日、八代市議で議長経験もある成松由紀夫、八代市の土木工事会社「園川組」代表・園川忠助、元市議・松浦輝幸の3容疑者を逮捕しました。

 逮捕容疑は、成松容疑者らが特定の建設業者を入札で有利にすることなどを市に働きかけて6000万円を受け取ったことです。事案は2016年の熊本地震で損傷した旧庁舎に代わる新庁舎建設計画。八代市が総事業費約171億円を投じる地域としてはビッグプロジェクトです。逮捕容疑によると、新庁舎建設工事を入札方式を指定したうえ、八代市が業者を選ぶ評価基準に前田建設が作成した案を使うよう市幹部に指示。前田建設の利益を増やすため、工事数を減らすよう市幹部に働きかけたそうです。

  入札方式は入札金額に加え技術力なども評価する総合評価方式の一般競争入札。入札したのは前田建設を中心とする共同企業体(JV)だけで、19年8月に118億円で落札しました。落札率は99・9%。落札状況をみると、素人の目では「談合しました」と自白したとしか思えませんが、これも一般入札の実相を語っています。入札制度はあらかじめ落札企業を想定して設計されることがあるのですから。

発覚は前田建設の”自己申告”

 発覚したのは前田建設の”自己申告”。社内調査で現金供与を把握し、2026年1月に警視庁へ情報を提供し、捜査協力を申し入れました。社員らは任意聴取に現金を渡したことを認めていましたが、この時点で贈賄罪の時効3年が成立していました。

 ゼネコンと談合。過去、数えきれないほど事件が頻発しており、いまさら驚くニュースではないかもしれません。大手ゼネコンの中には談合によって社長にまで駆け上がった人物もいますから、日常茶飯事とまでいいませんが、どう仕掛けるかによって実力が試され、営業担当者の将来が決まっていたようです。

 前田建設も多くの談合事件に関与し、指名停止や行政処分を受けてきた歴史があります。2000年代からみても、福島県の木戸ダム工事は福島県知事が辞職する大事件に発展し、創業家出身の前田又兵衛名誉会長が取締役を辞任しました。その後も、新潟市、北海道で繰り返され、東日本大震災を巡る復興・復旧工事では前田建設とグループの前田道路は他のゼネコン、道路工事と共に公正取引委員会から排除措置命令と課徴金納付命令を出され、前田道路は127億円を支払っています。

 昭和、平成で築き上げたゼネコンの事業モデルは崩壊寸前でした。日本の経済成長は立ち往生したままで、公共工事は萎むだけ。ゼネコン、道路会社は価格競争で受注を狙っても、利益を手にできません。違法と分かっていても、確実に利益を分配できる談合に走るしかない。前田建設や前田道路はその一例に過ぎません。

前田建設は持ち株会社を設立して脱却をめざす

 前田建設が2021年にインフロニア・ホールディングスを設立したのも、公共工事の縮小=談合の繰り返しという悪循環から逃れるためでした。前田道路を敵対的TOBで持ち株会社の傘下に収め、前田製作所も加えて総合インフラサービスを可能にする体制を整えました。狙いは新たな事業収益源を創造し、談合ときっぱり縁を切ること。仙台国際空港、愛知県の道路やアリーナ、神奈川県三浦市の下水道運営などを請け負い、成果は確実に上がっています。

 インフロニアは、建設業界が直面している「古い体質からの脱却」を象徴しているのでしょうか。八代市の談合も”自己申告”によって自らの罪を認め、次代のゼネコンの道を切り開く思いがあったのかもしれません。

 ただ、大型工事の受注に向けて談合する体質は表沙汰になっていないとはいえ、今も消えていません。あえて赤字受注して談合破りに打って出るゼネコンもいます。現実はカルテルの摘発に躍起になる公取委をみれば、今も「もぐらたたき」状態であることがわかります。

 果たしてゼネコンは消しても消しても消えない「談合のDNA」が課す宿痾から逃れることができるのでしょうか。

◆ 八代市庁舎の写真は久米設計のHPから引用しました。

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