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デンソー1兆円で近未来のモビリティ社会を飛翔、日本の産業革新の先駆になって

 デンソーが手持ちの現金1兆2000億円をどう使うのか。日本の産業革新力を占う試金石と考え、注目しています。

 デンソーは2026年2月、大手半導体のロームに対して買収提案しましたが、ロームは東芝と三菱電機と事業・経営統合する道を選択。ローム買収に必要といわれた資金1兆3000億円は、提案を袖にされたデンソーの手元に山積みになっています。デンソーの林新之助社長は「買収提案は取り下げたものの、協業の可能性は失われていない」と未練たっぷりに話しますが、せっかく1兆200億円の資金を自由に使えるなら、日本の産業界の常識を破壊するディスラプター役に変身する資金に活用、縦横無尽に駆け巡って欲しい。

産業のディスラプターに

 1年前の2025年3月、「デンソー EV半導体を加速 エヌビディアを追い、系列と自動車部品の殻を破って!」を投稿しました。世界の半導体を先導するエヌビディアと比較すること自体、大げさと思うでしょうか。むしろソフトバンクの孫正義氏が適任と考えるかもしれません。しかし、ソフトバンクじゃダメなんです。デンソーがディスラプターの先駆になってもらわないと日本経済の明日が見えてきません。

 日本の経済には変革する力が求められています。日経平均は一時7万2000円を突破し、人工知能(AI)がもたらす第4次産業革命への期待が高まっていると囃す声がありますが、日経平均の急騰の実態はソフトバンク、東京エレクトロン、アドバンテストなどAI、半導体に絡むわずかな企業が押し上げているだけ。日本にはエヌビディアのようにAIが創造する新たな産業に直接関わり、恩恵を受ける企業はありません。とても第4次産業革命が勃発する力はありません。

 それはそうですよ。1980年代、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と世界から賞賛と嫉妬を浴びる経済大国に押し上げた産業は自動車とエレクトロニクス。2026年、基幹産業の現状はどうでしょうか。

日本の基幹産業を変革する”エンジン”に

 近未来のモビリティ社会で主役を演じる電気自動車(EV)では中国や米国に追い抜かれ、はるか先を疾走する姿を追いかける立場に。それではエレクトロニクスは?。ソニーやパナソニックは過去の栄光を語るブランドに朽ちてしまい、家電売り場で日本製品を探すのはたいへん。

 AIが牽引する半導体は1980年代、世界トップの技術開発力で世界市場の過半を握りましたが、今や昔の話。日経平均急騰の主役である半導体素材、露光装置、製造・検査装置が気を吐いている程度。オープンAI、エヌビディアなどAIで主役として注目を浴びるユニコーンは残念ながら、見当たりません。

 なにしろ、2026年中に日本はインドにも抜かれて世界第5位へ後退します。GDPの規模で全てを図るわけにはいきませんが、強がりを言っても仕方がありません。

 デンソーをディスラプター役として白羽の矢を立てるのは、日本の基幹産業である自動車の隅々まで知り尽くしている総合電機メーカーだからです。トヨタ自動車系列を代表する部品メーカーですが、その実力はドイツのボッシュに次ぐ世界第2位の自動車部品メーカー。独ボッシュも半導体の開発・生産を加速していますが、デンソーも車載用システム・オン・チップ(SoC)と呼ぶ半導体に注力。台湾TSMCが熊本県で進める半導体工場、さらに日の丸プロジェクト「ラピダス」にも創設時から参加しています。すでに名実とも半導体メーカーです。

デンソーが変われば、日本の部品メーカー全ても変わる

 自動車産業は「100年に一度の変革」に直面しています。EVの普及によって、エンジン技術で築き上げた100年の歴史にサヨナラを告げ、AIと最先端の電子制御によって従来の自動車の枠を超えたモビリティ社会へ向かいます。

 デンソーがEV、人工知能、ネットなどを包含するデジタル技術と半導体を組み込んだ最先端の部品を駆使し、近未来のモビリティ社会をどう現出するのか。デンソーが先駆となって突っ走れば、トヨタに限らず日産自動車やホンダなどを支えてきた自動車部品メーカーも変革に走り出します。トヨタと取引する部品・下請け企業は7万社近くもありますが、部品メーカーの頂点に立つデンソーを追うように新たな技術や事業へ挑戦するでしょう。

 先手必勝!さすがデンソーです。事態を先取りする最適の人物を社長に選んでいます。林新之助社長は1986年に日本電装に入社、電子技術、ソフトウエアなどを経験した実務を知る技術者。「クルマ屋」を連呼するトヨタ経営陣と違い、自動車産業でも異色の経営者です。2024年に社長CEOに就任していますから、その経営手腕はまだまだ期待できます。

 元々、トヨタ系列といってもトヨタ本体とは一線を画す独立意識が強く、トヨタの意向に反してでも研究開発に注力、業容拡大を決断するのがデンソーのDNAでした。トヨタが悪い癖で小言を繰り返すでしょうが、AIとモビリティの近未来に向けて、新たに革新力を高めるDNAを注入し、ディスラプターの先駆に躍り出て欲しい。

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