
トヨタ、自動運転の新興企業に出資 16年前はテスラと資本提携 仮に継続していたら・・・
トヨタ自動車が自動運転システムの新興企業、ティアフォー(東京)に出資しました。米アルファベット傘下のウェイモ、中国ポニー・AIなど自動運転の有力企業とも提携しており、自動運転の技術開発や経験を着実に積み重ねています。
ティアフォーに出資
もっとも、自前主義のトヨタにとってベンチャービジネスはあくまでも参考資料。トヨタに欠けるジグゾーパズルのピースを補ったら役目は終わり。最強トヨタの余裕ともいえますが、オープンAI、アンソロピック、エヌビディアなど人工知能(AI)を巡る激しい主導権争いが示す通り、電気自動車(EV)や自動運転など近未来技術は日進月歩どころか秒進日歩。ベンチャービジネスをもっと深く取り込み、トヨタ自ら経営革新する勇気が必要なっているのではないでしょうか。
ティアフォーへの資本出資はトヨタ系のトヨタ・インベンション・パートナーズが出資しました。出資比率は1%で取得金額は10億円程度。豊富な資金を抱えるトヨタにとっては、万が一にも提携が失敗に終わってもかすり傷程度の金額です。
むしろ、EVの開発計画を遅らせたとはいえ、間もなく自動運転の時代が訪れるのは必至ですから、ウェイモ、ポール・AIなど米国、中国で実証実験が進む成果に日本ならではの自動運転のシステム開発、試行錯誤に関する見識を少しでも取得できれば万々歳というところでしょう。
トヨタは石橋を叩くどころか、壊すまで叩く
トヨタの最先端技術に対する取り組みは昔から変わりません。「石橋を叩いて、叩いて壊れるまで叩いて、信頼性を試す」を貫く自前主義です。
例えばエンジン。他の自動車メーカーと比べても、耐久性が高く故障しないエンジンの実現を掲げていました。たとえ欧米や日産自動車に比べてデザインが劣るといわれても、「トヨタのエンジンは信頼できる」と言われることを最優先しています。
世界で初めて世に送り出したハイブリッドシステムを搭載した「プリウス」。エンジンと電気モーターを組み合わせる発想はかなり以前からありましたが、トヨタは試行錯誤を重ねながら、世界のドライバーから評価される信頼性高いシステムに極めました。
ただ、近未来の自動車はエンジンからEVへ、そして自動運転、ひっとるすると空を駆け巡るモビリティへ飛翔します。世界第1位の自動車メーカーであるトヨタの技術力、財力をフルに活用してもなかなか乗り越えられない高く厚い壁が待ち構えています。今後も、新たな知見を求めて新興勢力と提携をするのでしょう。
2010年にテスラと資本提携
数多く提携で最も印象深いのがテスラとの提携。2010年、5000万ドルを出資して3%超の株式を取得しました。当時、テスラはイーロン・マスク氏が経営の実権を握り、EV実現に奔走していましたが、「自動車のことは何も知らない」と嘲笑されていました。迷走するテスラにトヨタが出資した時はちょっと驚きましたが、トヨタには出資せざるを得ない事情がありました。
2009年、ハイブリッド車「プリウス」などトヨタ車が米国で大規模なリコール問題に直面し、豊田章男社長は米議会公聴会で証言するほどの窮地に立っていました。米国市場は日本車が高いシェアを握り、米国自動車メーカーの経営は厳しさを増しており、日本車を代表するトヨタが攻撃の標的になったといわれていました。トヨタとしては、米国の自動車産業に貢献する姿勢を示すためにもテスラに出資したのです。
トヨタ・テスラの提携はわずか7年で物別れに。EVの開発・生産に対する考え方が両社で大きく異なり、スピード感を重視するイーロン・マスク氏と安全第一を優先するトヨタが並走できるわけがありませんでした。まあ、イーロン・マスク、豊田章男と共に個性派の経営者ですから、決裂するのは目に見えていました。
トヨタがテスラ株を持っていたら・・・
勿体ない提携でした。テスラはその後トヨタが懸念した通り、多くの事故を起こしながらもEVの自動運転を実用化し、トヨタから格安で譲り受けたカリフォルニア州の工場でEVの大量生産に成功、世界のEV市場で旋風を巻き起こします。カリフォルニア州の工場は元々、かつてトヨタとGMが合弁事業で活用、日米の巨人が手を組んだ象徴といわれたNUMMI(ヌーミ)工場です。テスラがGMに代わって成功するとは、なんと皮肉なことでしょう。
仮にトヨタがテスラ株を保有し続けていたら、トヨタのEV戦略は大きく変わったはずです。自前主義に固執するトヨタの発想も180度ひっくり返っていたでしょう。とてもおもしろい自動車メーカーが目の前で疾走していたはず。99%無理と承知していますが、そんな夢物語を目撃したかった。

