
ニデック、小林製薬、日産が証明 社外取締役は無用の長物
ニデックが6月18日に開催した定時株主総会は大荒れでした。2025年春から会計や品質管理をめぐる不正が相次いで発覚。かつて株式市場で最も高い人気を集めた銘柄の一つでしたが、いまや奈落の底へ。多くの株主は、カリスマ経営者として自ら祭り上げた創業者の永守重信氏を見る影もないほど非難する意見が相次ぎました。
ニデックの株主総会は大荒れ
読売新聞によると、議長を務める岸田光哉社長が陳謝した後、株主からは「永守氏のプレッシャーがあったとのことだが、内容は簡単な粉飾だ。経理担当や監査役にプライドはないのか。そんなことでは短期間で企業風土改革ができるとは思えない」「永守氏は去年(の株主総会で)『コンプライアンスが重要』だと言っていたが、裏切られた思いだ。永守氏が出てきて説明するよう岸田社長から促してほしい」と続いたそうです。
永守氏は記者会見などで華々しいパフォーマンスを演じるのが大好きな経営者でした。広告費を払わなくても無料でニデックをPRできたからです。自身の言葉で経営を語るのが持論でしたが、不正問題が発覚した以降は表舞台に登場していません。なぜ不正行為を阻止、あるいは最小限に食い止める努力ができなかったのか。説明責任をまだ背負っているはずですが、姿を消したまま。
もっとも、永守氏の功罪を改めて反芻することに時間を割くのは勿体無い。本来ならニデックが奈落へ引き摺り込んだ”永守経営”を阻止する役割を期待されたコーポレートガバナンスがなぜ機能しなかったのか。今、問い続けることを最優先すべきです。
第三者委員会は無力を認定
コーポレートガバナンスの要は社外取締役。機能したのか、それとも無用の長物だったのか。 ニデックが設置した第三者委員会の調査報告書は社外取締役が無力だったことを認定しています。
当委員会がヒアリングを行った社外役員の中で、ニデックにおける強い業績プレッシャーの存在が不正を引き起こす原因であると認識していた者はいない。また、社外役員は、当委員会のヒアリングにおいて、一様に、永守氏の経営理念を反映して、ニデックにおいて高い業績目標が掲げられ、その達成が強く求められていたことは認識していたと述べているが、それが非現実的なものであるとの認識を有していた者はいない。
調査報告書が明らかにしているのは社外取締役は何も社内事情を理解していないことです。社外取締役はニデックと取引や資本関係のない外部から選ばれ、経営陣から独立した立場で監督、助言するのが責務です。2026年3月時点の取締役会は10人で構成。社外取締役は7人と過半数を占めています。このうち4人は財務省や外務省など霞ヶ関の官僚出身。残る3人は大学教授が2人、弁護士が1人。企業経営の裏表に精通しているかどうか疑問ですが、そもそも永守氏は自身に異論を挟む人材を認めないでしょう。
第三者委員会も、社外取締役制度の限界を指摘しいますが、脇の甘さが日本らしいというか、現在のコーポレートガバナンスの欠陥を教えてくれます。
月に一度の取締役会に出席し、時折社内の会議体にオブザーバー参加することで、企業が抱える問題点を見抜くのは容易なことではないし、仮に企業の抱える問題を認識したとしても、取締役会で問題提起し、事業に精通している経営陣と対等に対峙することも容易なことではない。
コーポレートガバナンスが日本で本格な議論が始まったのは2010年代。日本企業の株価が国際的に低い評価のは、企業経営者に対する信頼が不足していると指摘されたからです。経済産業省は2014年、伊藤邦雄一橋大学教授を座長に「伊藤レポート」をまとめ、企業経営の雛形を公表。2015年6月、コーポレート・ガバナンス・コードが制定されました。
小林製薬は優等生だった
その伊藤教授を社外取締役に迎え「取締役改革の優等生」といわれていたのが、紅麹素材で多くの健康被害を引き起こした小林製薬でした。紅麹素材は2014年に欧州で報告され、日本でも注意喚起されていましたが、小林製薬は2016年に事業化。健康被害の訴えが広がったにもかかわらず、2024年3月に自主回収を発表するまで販売を継続しました。
医薬品メーカーとして安全安心は絶対に譲れない企業倫理でしたが、創業家・小林家出身者が絶対的な権威が発する命令に逆らえない企業風土がありました。自主回収に至るまでの経緯をみると、社外取締役4人が早くから警鐘を鳴らしたとは思えません。伊藤教授のほか佐々木かをり、有泉池秋、片江善郎3氏はいずれも企業経営に精通した優秀な経歴の持ち主。それでも、小林製薬創業家の暴走を止められませんでした。構図はニデックとそっくり。
社外取締役に共通するのは経営責任に対する鈍感さ。経営責任は執行役員が負うもので、社外取締役が問われることはない。もう何度目の経営危機なのか数えきれない日産自動車にも見て取れます。
日産は無自覚
2025年4月、内田誠社長は「忸怩たる思い」「日産はこんなもんじゃない」と自身の経営責任を全く自覚していない言葉を残して、社長職をイヴァン・エスピーノーザ氏に譲りましたが、日産の社外取締役も経営を窮地に追い込んだ責任については無自覚でした。
日産は社長交代しても、社外取締役8人全員が留任します。「新体制をしっかり構築することが私たちの責任」と社外取締役で取締役会議長を務める木村康氏は話していましたが、2019年6月からもう6年間も日産に携わっています。2期連続して巨額赤字を計上した日産の経営と無縁なわけがありません。
日本企業は社外取締役の実効性をいかに引き出すのか。再び根底から議論する時です。
◆ ニデックの永守重信氏の経営については、連載企画で解説しました。一読ください。
ニデック挫折の教訓 創業者・永守重信氏の功罪から学ぶ https://from-to-zero.com/nidecseries/

