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「コオロギが勝ち、ねずみは賢いだけ」AIに惑わされない企業理念を守りたい

「クック、クック」。突然、時計の窓が開き、鳩が登場。11回鳴き続け、午前11時を告げました。直後、鳩は奥へ退き、窓も「パタ!」と音を立てて閉まります。

 鳩時計は父が60年前に購入しました。何度も修理を重ねているのですが、鳩も疲れたみたい。今は年に数回ぐらい、しかも思い出したように「自分の仕事は忘れていないぞ!」とばかりに顔を出します。予想外にキレの良い動きをみせる鳩の姿を見ると、「今日はラッキー、自分も頑張るか」と思わず笑いちゃいます。

60年前の鳩時計が諭す

 スマホを時計代わりに利用する時代です。鳩時計はもうアナログというか、自宅や事務所にあったとしてもインテリアの一部でしょう。消えてしまっても困ることはないかもしれません。でも、思いもしない瞬間に現れ、「クック」と鳴く鳩を見ると「古くても良いものがあるよ」と諭される気分になります。

 人工知能(AI)ブームに翻弄されている日本企業と重なって映ります。2年前までオープンAI「ChatGPT」の登場に驚いていたら、今はアンソロピックが常識を超える高度なAI「クロード・ミュトス」を開発し、想像をはるかに上回る技術革命が始まっています。

 AIをキーワードに沸騰する株式市場とは裏腹に、企業は経営、組織運営などを根底から改革を迫られる恐怖と興奮の真っ只中にいます。SaaS死滅の恐怖が典型例です。クロード・ミュトスの登場でソフトウェアや専門家が担っていた仕事がAIによって駆逐されるのではないかとの憶測が一気に広がり、セールスフォースやアドビなどSaaS代表銘柄の株価は暴落しました。

企業理念はAIに駆逐されない

 しかし、企業の経営理念を産業廃棄物に貶めるわけではありません。どんな経営環境に直面しても、企業は自ら課した使命を達成するために存続していかなければいけません。自動車や機械、食品などどんな製品・サービスであろうと、経済と社会が必要とする適正なものを提供する義務と責任があります。AIに権限を委託して機能やコスト面などで最高の効率を達成したとしても、社会に害を与え、混乱を招く可能性があれば世の中に送り出すことはできないからです。

「コオロギが勝ち、ねずみは賢いだけ」。企業経営とAIの関係を考えていたら、こんなセリフが浮かびました。コオロギは、地球環境の過酷な変化でも遺伝子に組み込まれた本能によって何億年も生き延びてきました。一方、ねずみは高い学習能力によって厳しい環境下を生き抜いていますが、個々の学習能力は次世代に継承されるわけではありません。

遺伝的な強さの継承を忘れたくない

 生存競争を考える上で、学習能力で勝るよりもどんな環境変化でも適応できる「遺伝的な強さ」が最後の勝者となるのではないでしょうか。企業にとって遺伝的な強さとは企業理念です。なぜ自分たちは企業として存続するのか。単純な問いではありますが、経営の根幹をしっかり見つめ直し、不動のものとして継承することがAI時代に求められるのです。

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