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ホンダが消える64 上場初の巨額赤字 変革を唱えながら、何も変わらない「いつもの結末」

 ホンダは結局、自ら何も変革できない。2026年3月期決算で計上した最終利益4239億円の巨額赤字はその一例に過ぎません。

元凶の三部社長は続投のまま

 巨額赤字の元凶は脱エンジンを掲げ、電気自動車(EV)への大転換を推進した三部敏弘社長。2021年4月、就任と同時に宣言した「2040年までに新車をEVと燃料電池車に切り替える」は、5年後の2026年3月に撤回し、ハイブリッド車への回帰を表明しました。2025年に復権したトランプ米大統領のEV支援策打ち切りなど予想外の逆風が吹いたとはいえ、事業環境の激変に対応できず突然、EV戦略を大幅修正する大失態を演じました。

 この5年間の経営戦略の大失態を考えれば、三部社長は自ら辞任する選択もありましたが、社長続投を選びます。ただ、2026年4月に新設し、自身が就任した「企業変革責任者」の職を6月1日付けで本田技術研究所の四竈真人常務執行役員に譲ります。48歳です。64歳の三部社長より16歳若い四竈氏に目の前の緊急事態の建て直し、そして次世代の設計を託したともいえますが、側から見れば経営責任の放棄と見られても不思議ではありません。そんな三部社長の甘さを許すホンダだから今の窮地に陥ったのですから、社長続投は当たり前か?

四竈氏は次世代を担う適任者だが・・・

 企業変革責任者として四竈氏は適任でしょうか。経歴をみると、自動運転プロジェクトリーダーとしてレジェンドで世界最高水準の自動運転レベルを実現。その後、安全性や知能化を高めるソフトウエア開発の責任者を務め、次世代EVに不可欠なSDV戦略を指揮しています。ホンダの社長は本田技術研究所のトップが就任するのが慣例ですから、今回の就任は次期社長へのリトマス試験紙となるのでしょう。  

 冷めた視線で眺めれば、成果は期待できるのか。2000年代以降、変革を唱えて大胆な経営戦略をぶち上げ、結局は何も変わらないホンダを知っているだけに、EV戦略で自爆してしまった三部社長が演出するホンダ変革劇は、過去のコピー&ペーストではないかと疑心暗鬼にならざるをえません。

 ホンダは1990年代から企業変革に挑んでいます。残念ながら、今も試行錯誤の域を抜け出していません。

 当時の川本信彦社長は「ホンダはいつもタコ踊りしているわけにはいかないのだ」と数字に現れない立ち位置を説明したことがあります。ホンダはトヨタ自動車や日産自動車に遅れて四輪車に進出した結果、トヨタや日産が見逃すニッチな市場を狙って新車を投入、大きな話題を集めて販売台数を伸ばしてきました。

 しかし、1990年代に入ると、新車も販売台数も拡大し、トヨタ、日産と真っ向勝負する場面が増えます。話題先行の一発屋的な新車開発だけでは全国に整備した販売網を維持できません。確実に販売台数を上積みしながら、日産を追い抜き、トヨタに迫る。川本社長以降の歴代の社長にとって最大の経営改革テーマになりました。

EV大転換は伊東社長の600万台構想と重なる

 その極め付けが2011年4月に就任した伊東孝紳社長でしょう。「早く、安く、低炭素でお届けする」「2016年度に世界販売台数600万台」を目標に掲げ、当時の世界生産300万台を倍増するというとてつもない大風呂敷を広げました。

 2000年代は世界の自動車メーカーにとって合従連衡の時代でした。1999年に日産とルノーが資本提携したほか、欧米、日本のメーカーは様々な提携を繰り返し、規模拡大を目指していました。生き残りの目安は400万台といわれ、合従連衡で「400万台クラブ」に仲間入りするかどうかが求められました。創業以来、孤高を貫いてきたホンダが対抗するためには開発、生産、販売で大胆な改革を実施するしかない。伊東社長は決断したのです。

 結末は悲惨でした。過大な目標が現場へのプレッシャーに繋がり、フィットなどで連続リコールに端を発する品質問題が相次ぎます。車種が増えた結果、開発、生産、販売がホンダの身の丈以上に大きくなり、制御できなくなってしまいます。早くから「年間600万台構想はとても無理」との声が社内から出ていましたが、結局は破綻するまで止まりません。年間600万台を掲げた世界戦略は雲散霧消。14年後の2025年は年間350万台程度にとどまっています。

 三部社長のEV戦略の結末をみると、年間600万台の大風呂敷の顛末とそっくり。果たして2021年4月に脱エンジンを宣言した時、ホンダは絶対にできるという自信はあったのでしょうか。伊東社長と同様、自身の社長就任発表に合わせて「新たなホンダに変革するのだ」という高揚感に酔ってしまったのでしょうか。

無謀な戦略を修正できなかったホンダ社内

 脱エンジンとEVはコインの裏表の関係ですが、企業経営はコインを投げて表か裏を当てる博打ではありません。たとえ四竈氏が企業変革責任者として頑張ったとしても、三部社長の無謀な経営を見逃し、あるいは見て見ないふりをしたホンダ社内の空気が残っているなら空回りしてしまい、ホンダはコインと一緒にぐるぐる回るだけ。

◆ 写真はホンダのHPから引用しました。

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