
下請けいじめ解消 内部通報が特効薬 昭和の「巨人の星」も令和なら通報騒ぎに
親に投げ飛ばされた娘が児童相談所に相談したら、親が警察に逮捕される時代です。親はプロ野球・巨人軍の監督。逮捕後、すぐに釈放されましたが、娘に暴力を振るった事実は消えません。監督の職を失いました。
親娘喧嘩で監督辞任も
昭和の時代だったら、ここまで大騒ぎすることはなかったでしょう。梶原一騎・川崎のぼるの名作野球漫画「巨人の星」に登場するお父さんの星一徹なら、近所から数えきれないほど児相に通報されたかも。令和の時代、「昭和だったら・・・」と一笑に付すわけにはいきません。
日本経済を支え続けてきた「下請け」も同じでした。戦後の復興期から1980年代まで、親会社と子会社、あるいは孫会社の間に価格交渉は無いも同然。親会社は収益が危うくなったら、発注時の契約を下回る金額を支払い、在庫管理も無料で強いる。「利益はどこかで帳尻を合わせるから」の一言で終わり。
子会社、孫会社の下請け企業は親に投げ飛ばされどころが、首を絞められ息が止まりそうでも無言で我慢し、耐え忍ぶしかない。どうにもこうにならず、親会社の非情を中小企業庁や公正取引委員会に駆け込んだら、その後の発注はストップ。子であろうが、孫であろうが下請け企業の息の根は止まります。
しかし、令和は違いました。親子喧嘩同様、下請けいじめの解消に内部通報が大きに役立つことが証明されています。
中小企業庁、公取委は解消に努力
中小企業庁、公正取引委員会は大企業と中小企業の取引関係の是正に取り組んでいます。大きな力となっているのが内部通報。中小企業庁は不正な取引を強いる大企業の実態をオンラインと担当官を介して調査し、その評価を公表し、世間の目に晒す形で懲罰。公取委も頻繁に優位的な立場を利用した不当な価格交渉を摘発、商慣習となっていた下請けいじめを排除していました。中小企業庁も公取委も下請けいじめの情報は匿名を厳守しており、不正な取引を行った企業からの報復を防ぐ仕組みになっています。
中小企業庁が2021年9月から毎年9月と3月に公表している「下請けいじめ」調査の2025年9月時点の結果をみてみます。内容は発注企業の522社と89の国の機関・地方公共団体の評価が詳細に示されていますが、過去に厳しい評価を受けた企業の多くが大きく改善していることがわかります。
代表業種は住宅・建設、流通、運輸が御三家
まず住宅は飯田グループ、オープンハウス、大東建託、一条工務店、三井ホームなどが低評価の筆頭でしたが、2025年9月時点の調査では価格交渉、価格転嫁、支払い状況の3点でみても、改善しています。といっても、飯田産業は支払条件で最低評価、同じグループ企業の一建設は価格転嫁と支払条件で、オープンハウス・アーキテクトも価格交渉と価格転嫁でそれぞれ下から2番目に低い評価となっているのが実情です。これを努力した結果と見るべきなのか、もう努力の限界と見るべきなのか。まだまだ努力してほしい。
不十分だけど、進む改善
流通は、最低評価を受けたエディオンが支払条件で最高評価を獲得しました。でも価格交渉、価格転嫁では下から2番目の低い評価。カインズは価格交渉で最低評価。セブンイレブンがすべて最高評価を受けていますから、流通でもやってできないことはないのでしょうが、安売りを徹底する家電やホームセンターでは下請けいじめは解消できないのでしょうか。
運輸では、ヤマト運輸、佐川急便が健闘しました。価格交渉、支払条件でともに最高評価を獲得しました。偶然なのか価格転嫁はいずれも下から2番目の評価で一致。運輸業界ならではの商習慣が改善の邪魔をしているのでしょうか。西濃運輸とトナミ運輸は相変わらず低水準。最低評価からは脱していますが、ギリギリのラインに止まっています。
住宅、流通、運輸以外の業種でも「下請けいじめ」は大きく改善しています。典型例はトヨタ自動車。過去にトヨタグループで低い評価を受けた企業がありましたが、トヨタはすべての項目で最高評価を獲得し、グループ企業に対し「下請けいじめ」改善を徹底する姿勢を示しています。結束力が強く、契約厳守を求められることで知られるトヨタでも、「下請けいじめ」の誤解は絶対に避けたいと腹を括っている証拠です。
繰り返しになりますが、大きな改善を促したのは内部通報。長年、日本人の気質に合わないと批判されてきましたが、やはり高い実効性が証明されました。生成AIに相談するまでもありません。自ら実践しましょう。

