「ナフサ不足」 企業を恫喝する稚拙な政府、そろそろ不都合な真実を直視したら

「頑張ろう」旭川市の居酒屋「独酌 三四郎」のカウンター席に座ると、1枚の張り紙。落語家の柳家小三治さんがお店で定期的に高座を張ったご縁で書かれたそうです。日頃、何気なく「頑張ろう」と言葉にしますが、3、4本と焼燗を飲み続けていると「とにかく頑張ることから始めよう」と小三治さんに励まされている気がしたものでした。

小三治さんの「頑張ろう」に励まされる

「頑張ろう」。小三治さんの声が素面でも聞こえる日が増えています。米国のイラン攻撃に端を発した石油危機は日常生活に多大な影響を与え、消費者物価は高騰。産業用資材は調達すら難しくなり、食料品の消費税ゼロを掲げる高市政権の目玉政策などは雲散霧消してしまい、日本経済の歯車は油切れでギィ、ギィと音を立て始めました。

 ナフサ不足はその典型でしょう。ナフサは、プラスチックやゴム原料に不可欠で、設備機器・自動車・建機・医療機器・建築部材などで使われる部品に利用されています。ナフサを代替できる材料が少ないため、「不足しているから値上がりしました」という問題にとどまらず、幅広い製造業の生産、供給に大きな支障をもたらします。 

 当然、企業は事態の深刻化に備えて防戦を張ります。バス・トイレなど水回り関連危機の大手メーカー、TOTOは4月、販売の混乱を回避するため、浴槽やトイレなどの受注停止を公表しました。

政府は企業にアツ

 ところ驚いたのは政府の対応。企業を恫喝します。高市首相は「ナフサ不足は起こっていない」との認識を強調し、監督官庁の経済産業省がTOTOにヒアリングという形を取って圧力をかけます。どんな企業も政府に睨まれたくありません。TOTOは即座に受注再開しましたが、浴槽やトイレなどを販売する工務店の営業担当者は「受注停止が続いており、納入見通しは立ってない」と吐露します。
まだ続きます。カルビー。商品の安定供給を最優先に考え、パッケージ仕様を見直すと発表。「ポテトチップス」「かっぱえびせん」「フルグラ」など合計14品のパッケージに使用する印刷インクの色数を白黒の2色に減らしました。スナックはカラフルなパッケージで食欲を刺激します。白黒に切り替えれば、食欲も減退しかねませんが、むろんカルビーは承知です。消費者にとってもかなり衝撃的です。

 その衝撃度の大きさを政府が見逃すわけにはいきません。監督官庁の農水省がカルビーを1時間にわたってヒアリングを実施しました。

 それでも、まだ止まりません。カゴメも主力商品「トマトケチャップ」のパッケージを減色します。トマトの鮮やかな赤を際立たせるための「白インク」の在庫が限られており、赤い背景のプリント部分を減らし、印刷のない透明な部分を増やしたデザインに変更します。

 大きな声を上げられない中小企業や職人さんからも聞こえてきます。「塗料を扱うペンキ屋さんらは頭を抱えている」などなど。

不都合な真実を否定すれば、政府の信任は失われる

 政府にとってナフサ不足はかつての石油危機を彷彿させる「不都合な真実」なのでしょう。ヒアリングの形などで企業の危機対応に介入し、あたかも「危機は存在しない」かのような世論形成を狙っています。「大丈夫、大丈夫」と繰り返して時間稼ぎを期待しているのでしょうが、企業は目の前の危機を乗り切らなければ収益のみならず、取引先や消費者からの信用を失い、企業の未来も失います。もちろん、私たちの日常生活はもっとたいへんに。

 高市首相! 不都合な真実を否定し続けていると、自らの信任否定に直結、せっかくの高い人気が低落してしまいますよ。みんなで危機感を共有して「頑張ろう」と合唱しましょう。

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