
マツダ「CX-5」で乾坤一擲 ホンダは昔の車名をちぎっては投げ・・・
マツダが車種を絞り込む「乾坤一擲」の戦略を打ち出しています。5月、高い人気を集めるSUV「CX-5」を9年ぶりにフルモデルチェンジしましたが、発売当初マツダの優れた燃焼技術を体現したと誇ったディーゼルエンジンを廃止し、ハイブリッドエンジン一本に絞りました。マツダが強い欧州市場でディーゼル車は根強い人気がありましたが、今やハイブリッド車が好調にヒットしています。ハイブリッド車への絞り込みは当然です。
MAZDA2は国内販売終了
さらに驚いたのは「MAZDA2」の国内販売の終了。1996年に登場した「デミオ」を継承する小型車で、走行性能、使い勝手が優れ、高い評価を得ていました。マツダの国内販売の15%を占め、マツダ車購入のエントリーモデルです。ただ、販売台数は多いものの、収益率が低いため、より収益力が大きい人気SUV「CX-5」にシフトし、マツダの日本国内の販売力を底上げする狙いです。
マツダは海外販売比率が85%も占めており、国内販売より海外をテコ入れる経営戦略を進めるしかありません。とりわけ「CX-5」は世界販売の3割を占める文字通り、大黒柱。資金も人材も豊富なトヨタと違い、マツダは限られた経営資源を注いでなんとか独立自尊を堅持してきました。
ひと目見て「あっ、マツダだ」とわかる外観のデザインを小型車から大型車まで統一して、新車開発しているのもマツダならではの独創的な個性をアピールするためです。ロータリーエンジンも同じです。燃費の悪さで搭載を中止した後も、なんとか復活に向けて試行錯誤し続け、最近になって車載用発電として採用しました。「世界で唯一、ロータリーエンジン車を量産したマツダ」の看板を下すわけにいかないからです。
失敗は許されない気迫
マツダが突き進む新車開発は、失敗が許されません。幅広い車種を揃えるトヨタやVWの場合、販売にブレがあっても全体で相殺する経営ができますが、マツダはハズレが出れば、収益は失速します。まさに乾坤一擲の気迫が必須。「儲けてナンボ」のトヨタに比べ、危険極まりない面があります。「CX-5」と「MAZDA2」で垣間見た販売戦略に正直、感服します。
インサイトとブルドッグが復活
対極にあるのがホンダでしょうか。最近の新車投入をみていると、また悪い癖が出てきました。数多くの新車を投入しながら、いずれもそれなりの販売台数を維持するだけにとどまり、結局は新車投入のコストが四輪車部門の収益を圧迫する悪循環から抜け出せません。
直近では「インサイト」と「スーパーワン」でしょうか。両車とも電気自動車(EV)です。ホンダは2040年までにエンジン車を取りやめ、EVなど脱炭素車に転換すると宣言しましたが、2026年3月に宣言を撤回、新車の柱をハイブリッド車にシフトすることにしましたが、皮肉にも宣言撤回の直後に登場しました。
しかも、インサイトは1999年にトヨタの「プリウス」とどっちが燃費が優れているかを争ったハイブリッド車。2022年までに3回モデルチェンジした後、一時期ブランドは消滅していました。4年ぶりにEVで「インサイト」は復活したわけですが、中国の合弁生産車は3000台の限定販売。「インサイト」は画期的なハイブリッド車として登場しただけに、なんとも中途半端。
ホンダは1990年代に大ヒットした「オデッセイ」を2021年に廃止しましたが、2年後の23年に中国で生産した車を「オデッセイ」として復活させていますから、「インサイト」をEVで再現することに違和感は無かったのでしょう。
懐かしさに頼る中途半端な印象
「スーパーワン」は1980年代に「ブルドッグ」の愛称で一世を風靡した名車「シティ ターボII」からインスパイアを受けて開発したモデルです。当時、シティを愛用していましたから、もちろん「ブルドッグ」はよく知っています。試乗したこともありました。ただ、価格が高くて手が出ません。それがEVで復活するのですから、若者というよりは、60歳以上のシニア層でも購入したいと考えるでしょう。
「インサイト」も「ブルドッグ」も、そして「オデッセイ」も昔懐かしい車名ですが、ホンダファンに知られているブランド名をお手軽に採用した印象が拭えません。四輪車部門の収益回復が最大の経営課題ですから、まずは販売台数の底上げを優先したのでしょうが、マツダのような背水の陣の構えとは程遠い。近い将来、マツダとホンダの経営を占う分水嶺だったといわれるかもしれません。

