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地球温暖化が進んでも食文化は変えられない 北海道でブリ大豊漁、でも道民は食べない

 もう15年以上も前に聞いた笑い話です。北海道オホーツク沿岸で定置網を巻き上げたら、鰤(ブリ)が大量に漁獲されました。ところが、羅臼町の漁師さんは「この魚は何だ!?」と驚いたそうです。思わず、納得。

羅臼の漁師はブリを知らなかった!

 父親が大手漁業会社に勤めていたおかげで北海道の豊富でおいしい魚介類で育った人間です。ブリを食べた記憶がありません。ブリをおいしいと思ったのは20歳代半ば。1980年代初め、入社3年目の新聞記者として石川県金沢市に赴任した時です。

 高級ブランド「氷見のブリ」が物語る通り、北陸地方は素晴らしいブリが獲れます。全く馴染みはなかったのですが、近江町市場や居酒屋で地元の皆さんがブリを選ぶのを見て、「じゃあ、俺も」と食べてみたら、しっかりした歯応えの後に旨みが舌に広がります。天然モノのブリは養殖育ちと違って妙な脂がなく、いくら食べても口の中は爽やか。「ブリって、こんなにうまい魚なんだ」と知りました。

 あれから40年以上の歳月が過ぎた2026年5月、北海道新聞が「たくさん獲れるのに・・・なぜ道民はブリやイワシを食べないの?」と題した記事を伝えました。

 総務省の家計調査によると、北海道の2人以上の世帯が購入する量が全国平均比で最も多いのはカレイ。漁獲量が多く、十分に納得です。母親がカレイが好きなこともあって、函館に住んていた頃はほぼ毎日、カレイとイカで、これに鮭が続きます。カレイは今や高級魚になりつつありますが、北海道では漁獲量が多い魚種です。市場には生のカレイ、干したカレイが並び、今でもひと目見るだけで唾液が出てきます。条件反射する「パブロフの犬」ですね。

北海道がブリ漁獲量で第1位

 ところが、ブリは全く逆。都道府県別でみると、ブリの漁獲量で北海道は全体の20%近く占め、トップ。第2位の長崎県が14・3%、第3位の石川県が6・9%ですからダントツです。にもかかわらず、ブリは道民が購入量が少ない食品で下から3番目に低い。全国平均に比べて0・26倍とほぼ4分の1。

 ちなみに最も少ない食品はアジで、2番目に少ないのが干しアジ。自分の食の嗜好と同じ。アジの刺身、干した開きは上京して会社勤めを始めてから居酒屋で覚えるまで縁はありませんでした。

 最下位グループには鯛、里芋も加わっています。「北海道で獲れないから食べない」と道新は書いています。全くその通り。テレビのバラエティ番組などで鯛を「おいしい高級魚」と持て囃しますが、正直いって???が並びます。

 ブリの人気がないのはわかります。北海道で獲れ始めたのは2010年代に入ってから。海水温の上昇などを背景に北上する群れが増加、羅臼町や函館市など道内各地で定置網にブリが大量に入るようになりました。過去17年間で水揚げ量が約50倍に急増したそうです。地球温暖化によって山の植生が変わるように海の魚種の主役が交代するのは当然なのでしょう。

函館の特産品はイカからブリへ

 15年前にブリが豊漁になり始めた頃、気象の専門家が「札幌市の緯度は、今や岩手県の盛岡市ぐらいのイメージで考えた方が良い」と解説していました。実際、30度を超える真夏日が増え、北海道には無い梅雨が定着しています。小さい頃、台風はほとんど上陸しませんでしたが、年間何度も襲われるのが当たり前になってきました。

 2、3年前、イカの大不漁に苦しんだ函館が特産品をイカからブリへ変えるとのニュースを見た時は、笑えませんでした。もっとも、ブリがたくさん目の前にあっても、どう調理して特産品にするのか悩んだというオチも聞きました。

 函館育ちの私にとって正直、名産品がイカからブリへ変わってしまうのはちょっと受け入れられません。寂しい。地球温暖化に対応できない人類の1人と自覚しています。

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