
ナフサ不足 プラから紙・金属へ「エコの時代」に時計を逆回転?早回し?
「資源を有効に使い、無駄遣いはやめましょう」。至極当たり前の日常生活の過ごし方を石油製品の基本原料であるナフサ不足に諭されたかのようです。
生活様式の変化を諭されるよう
ナフサは米国のイラン攻撃によって供給不足に陥り、価格が高騰。プラスチックやインクなど身の回り品や産業資材で幅広く利用されているわけですから、不足や高騰となれば日本経済に大打撃を与えるのは誰の目から見てもわかります。言い換えれば、日本経済を動かす大きな歯車がポコっと抜け落ちたのと同じ。経済が立ち往生するわけにはいきませんから、プラスチックなどに代わる素材を使って欠けた歯車を補い、前進するしかありません。
スーパーでは、簡易包装へ切り替える動きが加速しています。イトーヨーカ堂は精肉や刺身のパックに使っていた蓋をプラスチックからラップへ切り替え始めました。パック売りをやめて、必要な量だけを一つの容器に取り分ける売り方も現れました。生鮮売場に置かれていたロールタイプの極薄の無料ポリ袋も撤去、あるいは使用制限するスーパーも相次いでいます。飲食店では紙容器に代替するほか、自分自身の容器やドリンクボトルの持参を呼びかけ、値引きするアイデアも広がっています。
紙や金属に代替
インクや溶剤の不足も引き起こしています。カルビーがスナック袋のカラーを白黒2色に減色するニュースは話題を呼びましたが、プリンなどに利用するカップが調達できなくなり、プリンの販売休止も始まりました。日清フーズスパゲティを結束している紙テープから茹で時間の印刷をやめる小技を繰り出されます。
日清オイリオグループは、金属製の「一斗缶タイプ」に切り替えます。一斗缶は密閉性と遮光性が優れ、食用油の酸化を防ぐ品質保持能力が非常に高い。プラスチック製容器の不足に左右されないうえ、金属製ですからほぼ100%リサイクルできるメリットもあります。
プラスチック製品から紙容器などに代替する動きはまだまだ広がります。すでにプラスチックに代わる耐久性などを備えた新素材は開発され、容器に利用できる技術はできあがっているからです。
ただ、脱プラスチックを掲げ、これまでも切り替える動きはありましたが、何度も頓挫しているのも事実です。多くの消費者が使い慣れたプラスチック製品を好むうえ、継続的に代替製品を供給できるサプライチェーンを構築できない課題が残り、小売側も躊躇したからです。
ナフサ不足は、大きな壁をぶち破る引き金になりました。米国のイラン攻撃が収束したとしても、不穏な中東情勢が変わるとは思えませんから、ナフサに依存するプラスチック製品から紙や金属など代替素材へ移行する動きは止まらないでしょう。
エコを毛嫌いするトランプ大統領が後押しする皮肉な構図
皮肉にも1980年代から「エコの時代」が連呼され、脱石油、リサイクルなど省資源を念頭に置いた生活様式の普及がようやく始まりそうです。エコロジー、ESG、SDGsなどいろいろな標語で表現されて「新たな潮流」として注目されてきましたが、残念ながら頓挫し続けています。
ナフサ不足をきっかけに広がる代替の動きをみていると、まるで時計の針が1980年代へ逆戻りしたのかと苦笑しちゃいそうです。それとも、時計の針を早回しして近未来社会を目の前に映し出したのかもしれません。
イラン攻撃を決断したトランプ大統領はエコロジーや環境汚染などを心底、毛嫌いしています。ところが、解決の糸口を見出せないまま、世界に広がる石油危機の余波というか副産物というか適切な表現が思い浮かびませんが、トランプ大統領が全く意図しないにもかかわらず脱石油を加速し、リサイクルなどで省資源時代の到来を後押ししてしまう。戦争しなければ、エコの時代は訪れないのか。悲しいことです。

