
リニア中央・北海道新幹線で談合 難工事で膨らむ建設計画が誘発か
「談合は理由はなんであれ不正行為。わかっているが、仲介と称して利益を奪い取ろうとする奴を排除しながら、どんな難工事でも完成させ、かつ建設会社が存続できるよう利益分配せざるを得ないことがある」。中国地方で談合を仕切っていた「影のドン」は談合を必要悪と説明します。「あら、そうかい」と納得するわけにはいきませんが、その言葉を裏付ける通りの談合が絶えません。
影のドンは必要悪を唱える
今度は北海道新幹線の延伸工事で発覚しました。公正取引委員会は国の外郭団体「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」が発注する軌道工事の入札で談合を行った疑いがあるとして、独占禁止法違反の容疑で、JRグループ系の建設会社など計9社を立ち入り検査しました。発注者の同機構も談合に関与した可能性があるとみています。
工事受注で立ち入り検査を受けた9社は、JR北海道グループの北海道軌道施設工業(札幌市)、JR東日本グループのユニオン建設(東京)、JR西日本グループの大鉄工業(大阪市)、広成建設(広島市)、JR九州グループの三軌建設(福岡市)と九鉄工業(北九州市)。ほかに東鉄工業(東京)や名工建設(名古屋市)、仙建工業(仙台市)。JR全体のグループの建設・工事会社がほぼ勢揃いといって良いでしょう。
JRと建設会社が一体?
談合の対象は延伸する新函館北斗―札幌間(約212キロ)に敷設するレール設置などの軌道工事に関する入札。延伸区間は10工区に分けてレールなどを敷設工事する計画で、24、25年の2年間で5工区が入札がされました。落札したのは大鉄工業、ユニオン建設、名工建設、広成建設、三軌建設の5社で、落札総額は計約200億円。公取委は入札される残る5工区について他の4社らが落札する合意があったとみており、10工区を分け合って安定的な利益確保に向けて受注調整していたと疑っています。
公取委は発注者の同機構側も談合に何らかの関与をしていた可能性があるというのですから、仮に事実としたら工事計画そのものがあらかじめ談合を前提に入札を実施していたわけです。
もっとも、驚いているわけにはいきません。丸切り同じ構図の談合が9年前の2017年12月、リニア中央新幹線で発覚しています。JR東海の完全子会社が仕切るJVに参加する大林組、清水建設、大成建設、鹿島の4社が品川駅や名古屋駅の工事で受注調整を行った不正事件です。
東京地検特捜部と公取委は大林組、清水建設、大成建設、鹿島建設の4社に対し、独占禁止法に基づく排除措置命令と、総額約43億円の課徴金納付命令を下しました。 大林組と清水建設は違反を認め、罰金刑が確定しています。禁止法違反で4社が起訴・処分されましたが、大成と鹿島は命令取り消しを求め裁判で争っています。
リニアも北海道も先行き楽観できず
実はリニア中央新幹線構想でも、中国地方の影のドンが予言したセリフをあるゼネコン社長から聞いていました。リニア中央は南アルプスの地下深くを通過するトンネルを掘るなど難工事が連続します。着工する以前から「受注しても赤字は確実。ただ、JR東海が社運をかける巨大プロジェクトを無視するわけにはいかない。どこかの工事で利益配分するしかない」と話していました。品川駅の談合を聞いて、ようやく氷山の一角が摘発されたと思ったほどです。
北海道新幹線の札幌延伸工事も、全体の8割を長距離トンネルが占め、想定外の岩塊の出現や軟弱地盤などに計画通り進んでいません。札幌までの開業目標は当初の2030度末から8年遅れ、早くても2038年度末となる見通しが示されています。開業目標が見通せないところまでリニア中央とそっくり。
残念ながら、リニア中央、北海道の新幹線構想の先行きは楽観できません。談合の根は深く張っているはずです。中国地方の談合を仕切った「影のドン」の弁明を再び。「限られた予算の中で工事を完成させているのだから、発注者に損させているわけではない」。

