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ビザ手数料が48年ぶりに5倍 物価上昇が理由というけど、国家戦略の詰めの甘さが露呈

 政府が7月から外国人向けのビザの発給手数料を5倍に引き上げることを決めました。1978年に手数料を定めて以来、48年ぶりですからほぼ50年ぶり。2003年に小泉首相が「観光立国」を宣言し、外国人観光客の呼び込み、いわゆるインバウンド拡大に注力したにもかかわらず、国家の収入となるビザ発給手数料がなぜ半世紀近くも据え置きのままだったのか。

48年間でラーメンは5倍に

 手数料は通常ビザが3000円から1万5000円へ、一定の期間内に複数回使えるビザが6000円から3万円へ。ほぼ半世紀ぶりに5倍も引き上げる理由が振るっています。「現在までの物価の上昇や為替相場の変動に対応するため見直しを行った」(茂木外相)。誰が納得しますか。「消費者物価も上がっているから、そろそろ手数料も引き上げるか」と決断するまでに48年の歳月が必要だったのでしょうか。

 1978年当時の物価を振り返ってみてください。ラーメンは1杯200〜300円ぐらい。学生のアルバイトの時給は飲食店で450円が平均相場。初任給は月給が10万円ちょっと。現在はラーメンが1000円前後。バイト時給は同じ飲食店で比較すれば1200〜1400円。ビザ発給手数料と同じ5倍程度上昇したのがラーメン。ひょっとしたら、外務省が試算の根拠にしたのはラーメンかも。

 ただ、ラーメンも初任給もバイトの時給も諸物価と連動して上昇して、現在の金額に。突然ラーメンが5倍になったら、だれもラーメン店に行かなくなりますよ。もっとも、ビザ発給手数料を支払うのは外国人。上昇幅が海外で人気絶好調のラーメンと同じ5倍と聞けば納得するかも。

国家戦略の欠落を象徴

 目くじら立てる話題じゃないと批判の声も聞こえそうです。手数料を支払うのは外国人。日本国民に損を与えるわけじゃない。

 いやあ〜、ビザ発給手数料の引き上げには国家戦略の欠陥が潜んでいる気がするのです。まず、なぜ48年間も据え置きのままだったのか。ビザ手数料は国の収入です。巨額の借金を塗れた国会予算を支える国税など公租公課のひとつです。インバウンド拡大と連動して収入増を進めれば、結構な金額が国庫に収まったはずです。実は「得べかりし利益」、本来ならもっと大きな利益を得るチャンスがありながら、みすみす利益を逸失したのです。

 2013年からインバウンドの観光客は1000万人を突破、2025年には4000万人を突破しています。単純計算すれば、2026年には3000円の手数料なら1200億円を超える金額が収められます。手数料が5倍になったら、年間収入は6000億円に膨らみます。今の勢いなら、数年以内に1兆円に迫るでしょう。

 茂木外相は記者会見で「すぐにインバンウドに影響が出るとは考えていない」と説明しているのですから、引き上げ効果を大いに期待しているはず。食料品の消費減税を補填する5兆円の財源がなくて困っている高市政権にとって、濡れ手に泡のプレゼントでしょう。

 日本と米国のビザ発給を単純比較できませんが、米国が観光や短期滞在する日本人に発行するビザ・ESTA(電子渡航認証システム)をみてください。2009年に手数料無料で導入され、翌年の2010年9月に14ドルに設定。12年後の2022年には21ドル、2025年9月には40ドルと引き上げられています。2026年1月は法律によるインフレ連動調整で40・27ドルに。

 日本が48年間も放置した事実は、日本の観光立国政策というか国家戦略の詰めの甘さが露呈しているのです。首相や担当大臣が望む華々しい政策を数字やカタカナを多用して花火のように打ち上げても、政策を立案する官僚たちが成果に至る道筋や具体的な政策の肉付けにまで手が回らず、思わぬ時に政策の欠落を見つけてしまう。

氷山の一角に過ぎない

 たかがビザ発給手数料、されどビザ発給手数料。48年ぶりの5倍引き上げは氷山の一角にすぎません。政治家に振り回されずに懸命に政策作りに努力する霞ヶ関官僚の姿を目撃しているだけに、残念です。

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