本物の柳葉魚と焼燗

賃金はなぜ上がらないのか 日本の資本主義は清貧か貧困か 変革への欲望は欲しい

日本経済には「杞憂」という霞が漂い、視界が悪い

 前口上はここまで。では「賃金がなぜ上がらないか」。日本経済と世界経済の間にぼんやりした霞(かすみ)が漂っている気がします。その視界の悪さが日本経済に「杞憂」を生み出し、「賃上げなんか期待できない」という空気が広がって将来への視界をさらに不透明にしてしまっているのではないか。誠にぼんやりとした根拠ですが、不安げな日本経済の現在を端的に表現しています。

 値上がりは日本のみならずどの国にとっても歓迎されるものではありません。店頭で予想よりも高い値札を見ると、ガクッときます。「値上げに負けず、もっと高い給料をもらうぞ」。そんな気持ちが湧くなら、不透明な視界も先行きが見えてきます。しかし、最近の値上げラッシュを前になんとか生き抜くためには無駄な消費をしない、徹底した節約しかないという気持ちしか湧きません

 その背景には「賃金は上がらない」との思いが日本中の社会常識として共有されているからではないでしょうか。なぜならば、企業の収益が高まるわけがないとの認識が社会常識として定着されているからです。

 こんな当たり前のことを今さら繰り返すのか、と思う方は多いはずです。しかし、経済学の世界を改めて勉強していたら、まさに眼から鱗のように感じる大前提に出会いました。資本家は欲望を持っていることです。欲望は誰しも持っています。資本家の欲望は、経済成長の実現、利益の拡大を通じて果たされ、常に満たされぬ思いを感じます。マルクスの資本論のように表現すれば、労働者が一生懸命に働いて生み出した価値を資本家は搾取して、搾取して拡大した利益を次の金稼ぎに投入するのです。それが企業の成長を持続させ、富の極大化が進みます。

資本主義は「欲望」、日本には清貧の美風はあるのが・・・

 これが資本主義というのであれば、日本経済にもかならず「欲望」が充満しているはずです。ところが日本の資本家はその欲望を持っているのか甚だ疑問です。欲望の発露の仕方も問題です。社員の賃金上昇に向かうのか、設備などの投資に向かって賃金を抑制するのか、あるいは企業の内部留保などの拡充につながるか。先日、終焉した春闘の場で企業の利益分配について労使が協議したと思いますが、資本主義の大前提である「欲望」を起爆剤にした成長へのエネルギーが再生産されたのかどうか。

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