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テスラ 人型ロボット

「人型ロボット」劣化した日本の製造業を映す 技術があっても世界から置いてきぼり

 人型ロボットが人工知能(AI)に続く最先端技術のテーマとして注目され、まるで世界中で狂騒曲が渦巻いているようです。中国からはダンスやサッカーをしたり、100メートルの世界記録を上回る速さで駆け抜ける派手なパフォーマンス映像が発信され、欧米からは人間同様の細かい作業もこなせる実用的な性能を保持したロボットが相次いで登場しています。

中国、欧米が今や先行

 日本でも多くの企業が開発を急ぐニュースが多く飛び交っていますが、冷静に眺めれば日本が中国、欧米を追いかけている構図です。

 本来なら、日本が世界に先駆けて人型ロボットを開発、実用化しているはず。ファナック、安川電機など日本の産業用ロボットは世界を先導して生産現場に普及させ、1990年代はハード・ソフト両面で日本の技術力は抜きんでいました。

 実力がありながら、なぜ中国や欧米の後塵を拝してしまったのか。お祭り騒ぎに沸く人型ロボットを外野席から眺めていると、劣化が止まらない日本の製造業の現実を痛感してしまいます。

 なにしろ、人型ロボットは日本が先駆でした。研究開発は1960年代から本格化しており、1996年12月にはホンダが世界で初めて二足歩行する人型ロボット「P2」を発表。ロボットメーカーではなく自動車メーカーが開発に成功したこともあって世界のロボット研究者に衝撃を与えました。

 人型ロボットは人工知能や精密部品など最先端の製造技術を結集した賜物です。ホンダの人型ロボットは日本経済を支えた自動車を含む製造業の優れた技術を体現していたのです。

ホンダ「アシモ」は世界に衝撃

 人間らしいロボットが人間と一緒に暮らす社会を実現する。この発想も日本が先駆けではないでしょうか。70年前、手塚治虫さんが創り上げた「鉄腕アトム」を思い出してください。人間の友人、いや親友として互いに信頼し、悩む関係が描かれ、とても身近に感じました。

 ホンダの「P2」は進化して、2000年に初代「アシモ」が登場。2011年には70年前の鉄腕アトム同様、走りジャンプする姿を見た時は、ロボットが人間社会を手助けしてくれる友人として目の前に立った思いでした。

 ところが、ホンダは2018年に人型ロボットの開発を終了。2022年には「アシモ」は表舞台から引退します。ホンダの経営が悪化したのが引き金だったのでしょう。日本のロボット研究でトップレベルの教授は「世界に対抗できる実力を持つのはホンダぐらい」と今後の研究成果に期待していましたが、開発終了はとても残念でした。

 元々、ロボットの概念は1920年にチェコスロバキアの劇作家カレル・チェペックが創案し、SF作家のアイザック・アシモフがロボット3原則を提唱して人間社会と共生する可能性を示しました。しかし、欧米は軍事利用が主眼となり、武器を背負って荒野や森林を走り抜け4本足の犬型ロボットなどが開発テーマでした。

 今ではペンタゴンやグーグルなどが資金力に物言わせてロボット研究のトップに躍り出ており、巧みな資金集めにも定評がある米国のボストン・ダイナミクスが4足歩行、人型のロボットで最先端を走っています。

生成AI同様、巨額資金が開発に

 イーロン・マスク氏のテスラもロボット開発を加速しています。2021年に初期モデルを公開。2年後の2023年12月には卵をつかんだり繊細な動きが可能になった人型ロボット「オプティマス第2世代」を動画で紹介しました。 自社の電気自動車工場へ数千台規模で導入する計画が進行中で、将来は2万〜3万ドルと自動車並みの価格で販売するそうです。

 驚いたのは2022年に設立したばかりのベンチャー企業、米フィギュアAIがあっという間に人型ロボットの量産を始めることです。2025年3月から年間1万2000台を生産を開始しました。背中を押したのは米国の巨額マネー。アマゾン創業者のジェフ・ベゾス、マイクロソフト、エヌビィデア、インテル、オープンAIから6億7500万ドル、日本円で1000億円程度の資金を調達しています。

落日の日本は復活できるか

 優秀な技術を要しながら、人型ロボットの開発・実用化でなぜ中国や欧米の後塵を拝する結果になったのか。理由は明快です。開発計画を定めたら、音速を超えるマッハのごとく疾走するスピードと巨額の資金調達力。そして日本が最も欠落している挑戦する勇気です。

 半導体、生成AIとあわててなんとか追いつこうとする日本の産業政策のツケは二の舞なのか三の舞なのかわかりませんが、人型ロボットでも演じられています。きっとなんとかも追いつくのでしょうが、巨額の先行利得は中国か欧米のメーカーに手に収められ、日本は激烈な競争に見舞われるだけでしょう。これでは日本の製造業は再び輝きを取り戻することはできません。

 日本の製造業が落日のように輝きを失っているのは十分に承知しています 1980年代に世界一に躍り出た半導体、電機はかつての栄光の面影は失せ、自動車も今や夕焼けの時を迎えています。いまさら泣き言を繰り返す気持ちはありません。ただ、現実をしっかり直視してなんとか復活の可能性を探りたい思いは捨てられません。

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