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紙幣の山

「信用を捨て、顧客をカネに変える」生保営業の末路 プルデンシャルだけじゃない

 生命保険というビジネスが、いよいよ構造的な限界を迎えています。「最強の営業集団」と恐れられたプルデンシャル生命保険が2026年10月8日に公表した第三者委員会の調査報告書は、その象徴だ。社員らによる金銭詐取の被害者は794人、被害額は約61億6660万円にまで膨れ上がった。この不正が1992年から30年以上にわたって見過ごされてきたというのですから、声も出ません。

 一部の不届きな社員が起こした不祥事とは思えません。顧客との信頼関係を「密室化」させ、個人の人脈を徹底的に数字に変えていく生保営業そのもののシステムが引き起こしたのです。

 金融庁は報告書公表の翌日にプルデンシャルと同様の不正行為が発覚しているジブラルタ生命に対して3カ月の一部業務停止命令という極めて重い行政処分を下しました。組織が完全に倫理を失っていたことに対する事実上のレッドカードといえるでしょう

「トクリュウ」と変わらない、企業倫理の消滅

「成績さえ上げれば神様扱い、ダメなら最低賃金」。そんな極端な成果主義で営業社員たちは追い詰められ、あるいは横暴に歯止めがかからなくなったのでしょう。顧客から次々に知人を紹介してもらう「無限連鎖法」を会社が推奨し、ハワイや沖縄への招待旅行で功労賞を送り、さらに一層の営業拡充を煽る。

 会社からも見えない闇の営業が生まれたのです。信頼する顧客から大金をむしり取り、プルデンシャルという信用に裏付けられた看板の裏で犯罪的な詐取を繰り返す。構図は、SNSを通じて緩くつながり、罪悪感なく犯罪に手を染める匿名の流動型犯罪グループ、いわゆる「トクリュウ」と変わりません。生命保険会社に最も求められる「企業倫理」は微塵も残っていないのです。

業界のガリバー・日本生命の「情報密輸」と証拠隠滅

 外資系や成果主義の会社に限った話なのでしょうか。日本の生保業界の象徴であり、伝統的な国内営業スタイルをとる日本生命保険でも、同様に倫理の底が抜けた不正が発覚しています。
 日本生命から三菱UFJ銀行などメガバンクへ出向していた社員たちが、出向先の内部資料を無断で持ち出し、自社の営業部門に情報提供していました。さらに悪質なのは、社内調査が始まった直後、日生の営業部門が保存先フォルダーを削除して証拠隠滅を図っています。
 外資系が「個人の密室」で顧客を騙していたとすれば、伝統的な国内生保は「組織の密室」で他社の情報を盗み、都合が悪くなると隠蔽していました。根底には「数字のためならルールも倫理も無視して構わない」という生命保険の営業の鉄則が明確に露呈しています。

「人」に頼る生保営業モデルの限界

 「保険という、目に見えない商品を人に無理やり売らせる」という従来の営業モデルが限界に達しています。
 生命保険は、万が一のときの安心を提供する制度です。ところが、現在の生保営業は過酷なノルマや報酬のために狂奔し、買い手である顧客はカモにされるか、情報流出のリスクに晒されています。
 プルデンシャルは再発防止策として、2027年から「最低保証給」を導入し、完全歩合制に捨て去ります。日本生命は銀行への営業出向を廃止するなどの改善策に取り組んでいます。

 でも、長年培われた「営業第一、数字至上主義」の呪縛は、そう簡単に解けるものではありません。生命保険会社の信用は、報酬制度変更や出向廃止の形式的な改革で取り戻せるほど安易ではありません。第2、第3の「トクリュウ型不祥事」の病巣は、まだ残っていると考えてもおかしくありません。

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