
オーストラリア EVがガソリン車を抜く
オーストラリアの新車販売で電気自動車(EV)がガソリン車やディーゼル車を初めて上回りました。オーストラリアに住んだ経験があるだけに、かなりの衝撃です。
元来、地球温暖化の防止に向けた環境保全の意識が高い国です。日常生活のあちこちにエコが浸透しており、それがファンションであり、ステータスとして定着しています。国の経済力は第一次産業に依存しているため、地球環境に敏感にならざるを得ません。
広大な国土がEV普及のネックに
世界第6位の国土に眠る豊富な石油・ガス、石炭の化石燃料を採掘する一方、広大な国土を活用して牛や羊、小麦など多くの農産物を輸出します。人口はわずか2800万人。国民一人当たりの所得が世界でも上位グループに位置するのも頷けます。
環境意識が高く、国民所得に恵まれている。一見、エンジン車に比べ高価格なのがハンディキャップといわれたEVがヒットする条件が整っているかにみえますが、販売の壁として立ちはだかるのが、皮肉にもオーストラリア経済を支える広大な国土です。
なにしろ大都市を結ぶ鉄道網が整っていませんから、自動車は文字通り、日常生活の手足。ちょっと遠出すれば街並みは消え、内陸部の大半は水平線までオーストラリア独特の赤い砂漠が待っています。自動車の燃料切れは即、命に関わります。
私自身も過去に経験しています。オーストラリアのど真ん中を砂漠を走るためにはトヨタ自動車「ランドクルーザー」でなければ許可されず、しかも燃料は補助タンクも加え200リットル程度の確保が必須。スペアタイヤも2本。もちろん、ミネラルウォーターはたくさん携帯します。ここから先は何百キロもスタンドがないという場所で燃料補給した場所は、外部気温が45度ぐらいもありました。立ち往生したら、運良く後続の車と出会わないともうおしまい。
そんなオーストラリアですから、EVは高い注目を集めたとしても、移動の安全性や利便性を考えたら、そう簡単には売れないと考えていました。
8月は過去最高
ところが、ついにヒットし始めました。オーストラリアの自動車会議所によると、2026年8月のEV販売台数は2万7000台と単月で過去最高を記録しました。、
米国のイラン攻撃によって原油が高騰した結果、ガソリンなどが急騰、食品と並ぶ重要な燃料の維持費を抑えるため、EVにシフトせざるをえなくなったそうです。
これまでネックとされた「充電インフラの不足」や「航続距離の不安」も解消されています。ジェトロなどによると、 連邦政府は「充電砂漠」を解消するため、主要幹線道路沿いに平均150km間隔で超急速充電器(150kW以上)を配置する国家プロジェクトが完了へ向かっています。
シドニーやメルボルン、ブリスベンなどの大都市圏では、ショッピングセンターや公営駐車場への普通・急速充電器の設置が義務化され、買い物ついでに充電するスタイルが定着しました。 世界トップクラスの一戸建ての太陽光パネル普及率もあって、日中の余剰電力をEVに充電するライフスタイルが定着、燃料費を実質ゼロにする家庭が増えています。
もう一つのハンディキャップである高価格もクリアしました。公的補助金に加え、BYDなど中国メーカーがガソリン車と同等かそれ以下の価格帯のモデルを相次いで投入しました。
EVのハンデが消えている
オーストラリアの新車市場は120万台を超える規模です。日本の456万台の4分の1程度と小さいですが、過小評価するわけにはいきません。
燃料の高騰、充電インフラの拡充、公的補助金の充実、価格の低下・・・。いずれも日本で始まっていることです。日本国内市場を握るトヨタがEVに慎重になっていることが、エンジン車からEVへのシフトを遅らせているに過ぎません。
オーストラリアを明日の日本と割り切っって眺める方が賢いのではないでしょうか。

