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自動車産業が消える④生き残りのキーワードはモジュール デンソー、ZFが拓く道

 自動車をめぐる産業論を展開していても、つまらないので、今回は部品メーカーの経営について考えてみます。

部品メーカーに進化を迫る

 生き残るキーワードは何か。それは「モジュール」です。機能単位、交換可能な構成部品などを意味する英語です。機器やシステムの一部を構成するパッケージとなった機能を持つ部品群といえばよいでしょうか。複数の機能をひとつの塊と捉え簡単に機能を追加、あるいは交換ができるようになれば、技術開発やソフトの進化に合わせて自動車全体の機能を高めることができます。エンジン車に比べて部品点数が減るEVにとってモジュール化は不可欠な設計思想といえます。

 EVは自動車のエンジンや駆動系が抜け落ちただけの移動体ではありません。まだ開発途上の段階。インターネットなど情報技術を駆使してカーナビゲーションやエンターテインメントなどより高度な機能を装備します。部品メーカーとして要求されるのは、新車開発や課題解決に向けて開発・生産陣から示されるさまざまな課題に答えを出す会社。個別部品の技術、品質のみならずシステム化できる実力がより重視されます。

 電機メーカーやIT企業の独壇場というわけでもありません。自動車は電気製品と違って、長時間の振動、激しい気候変化でも故障しない耐久性や高精度の信頼性が求められます。自動車部品メーカーとして培ってきた技術や生産での経験・知見はEVの世界でも強い競争力となります。

注目株はデンソー

 このモジュールを体現しているのはデンソーです。エアコン、半導体技術、···。トヨタでさえ電子関連技術では敵いません。海外をみても、デンソーと肩を並べるのはドイツのロバートボッシュやZFぐらい。自動車部品で世界のトップグループを占めています

 デンソーは今後、トヨタ系列というよりは世界の自動車や産業機器向けに電子部品の総合システムを提供するサプライヤーの役割を強めていきます。台湾のTSMCが熊本県でソニーなどと建設している半導体工場に参加しているのが良い例です。自動車部品の枠、意識はすでに超えています。

 もう一つのキーワードは特定分野に頭抜けた技術力です。エンジン関連は苦境に追い込まれるかもしれませんが、電装·電子、駆動、懸架、車体、情報は大きなチャンスです。総合力でデンソーには敵わないまでも、進化する電気自動車が欲する新技術や機能を提供できる会社は大きく飛躍できるチャンスです。

経営規模が大きくても脱落も

 モジュール化の条件が揃っていても、生き残りが保証されているわけではありません。EVの流れに乗れない部品メーカーは中堅・中小企業を中心に整理淘汰されると噂されています。しかし、経営規模が巨大でも時代の流れを見誤れば、脱落します。

 マレリを見てください。日産自動車を主要取引先とするマレリホールディングスは2022年7月、経営破綻しました。負債総額は1兆円を超え、製造業で過去最大規模。もともとは日産系部品メーカーを代表するカルソニック、関東精機が合併した会社でしたが、日産再建で剛腕を奮ったカルロス·ゴーン氏の過去のしがらみに拘らない部品調達の影響もあって海外ファンドに売却され、2019年にはイタリアの自動車部品大手マニエッティ・マレリと経営統合しました。

 かつてはトヨタ系列の日本電装(現デンソー)に対抗する「日産電装」の役割と期待を担っていました。残念ながら、デンソーを追走することはできませんでした。現在はEVや自動運転に照準を合わせて2600億円を投じ、経営再建に取り組んでいます。

 モジュールを発展させて、自身の殻を打ち破る動きもありります。部品メーカーにとってEVシフトは系列を離れ、自らの事業基盤を切り拓くチェンスだからです。

ZFは商用EVに進出

 ドイツのZFをみてください。日本経済新聞は、ZFが日本市場をターゲットに商用EVに進出すると伝えています。トラックなど商用車のEV開発が出遅れており、ライバルが少ないと判断。設計から生産まで請け負い、2030年には1万台の受注を目指します。ZFはEVの課題である走行距離を引き延ばすとともに、コストダウンに力を入れ、既存の自動車メーカーと競う覚悟です。

 ZFのEV進出が具体化すれば、デンソーやアイシンがEV進出を決断する日も近いと考えます。

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