
ホンダが消える62「アフィーラ」理想と現実の袋小路を脱出し、もっと強くなって現れて!
ホンダとソニーが共同開発した電気自動車(EV)「アフィーラ」が一時停止しています。あえて中止という表現は避けます。再び始動する価値があると信じているからです。ホンダとソニーが起こした化学反応は新たな「分子」を創出しており、さまざまな結合によって「もうひとつのアフィーラ」が胎動するはずです。
ホンダとソニーの化学反応は雲散霧消しない
2026年3月、ホンダが発表したEV戦略の大幅な軌道修正を受け、ソニー・ホンダモビリティも「アフィーラ」の開発と販売を中止すると発表しました。すでに予約を受け付けており、2026年中に米国カリフォルニア州で納車が始まる段階まで来ていました。残念です。
ホンダとソニーが手を組んで近未来のEVを世に送り出す。世界から注目を浴びるスター企業が手を組んだプロジェクトだけに、一時停止した衝撃は広がっています。「ホンダ社内の人事抗争に巻き込まれた」「BYDなど中国勢のEVに価格面で勝てなかった」「ソニーが過剰に車内のエンターテインメント創出にこだわり過ぎた」などさまざまな意見が噴出しています。なかには「発売されても、販売台数は期待できず苦戦したはず」と先行きを悲観視し、プロジェクトの停止は避けられなかったとの声も聞かれます。
確かに「アフィーラ」が予定通り、発売されたとしてもヒットはしなかったでしょう。ホンダ「アコード」を母体にしたセダンであり、価格は8万9900ドルと日本円で1400万円を超える高級車。現在、EVの主役はセダンではなくSUV。EV市場を世界に先駆けて切り拓いたテスラはセダンからスタートしましたが、今はエンジン車市場で最も売れているSUVに軸足を移しています。安売りで世界のEV市場を席巻している中国のBYDもSUVの品揃えを充実させています。ただでさえ足踏み状態のEV市場にセダンの「アフィーラ」を投入しても「顧客のニーズと乖離して販売台数は伸びないだろう」と考えるのは当然です。
EVはモビリティ・ロボットに
ただ、EV市場の現状に目を奪われた近視眼的な見方に囚われてはいけません。EVは脱炭素を掲げて化石燃料を使わずに電気エネルギーを使用するクルマとして普及し始めていますが、目先はエンジン車の代替役として売れたとしても、近未来のモビリティ社会で果たす役割はエンジン車と全く異なるからです。
EVは見かけは自動車でも、その性能は人工知能とネットで進化し続けるモビリティ・ロボットと考えるべきです。人工知能が発する電子信号は、車体全体を網羅する神経細胞として配された半導体などを介し、「脳」「眼」「手足」としてEVを運転します。EVをソフトウエアによって性能が進化するSDV(ソフトウエア・ディファインド・ビークル)と呼ばれる所以です。
もちろん、EVがモビリティ・ロボットとして生まれ変わるのはまだ夢物語。でも、「アフィーラ」はライバルよりも一歩前進しています。ホンダは人型ロボット「アシモ」、ソニーは犬型ロボット「アイボ」をそれぞれ開発していますが、開発会社のソニー・ホンダモビリティの川西泉社長はアイボの開発責任者でした。ホンダはEVを制御する基本ソフトを「アシモ」と名付け、人型ロボット「アシモ」の開発で培った外界認識技術や人の意図をくみ取る技術を活用しています。
アシモとアイボのDNAが理想に迫る
「アフィーラ」はEVの理想を追い、走り出したばかりです。途中、厳しい現実に跳ね返され、繰り返される失敗にへこたれるわけにはいきません。むしろ、理想と現実の狭間で迷い、悩み、正解を発見する試行錯誤が「アフィーラ」をより現実に近づけるのです。車体に張り巡らされたレーダーやセンサーを使って一時停止という袋小路から脱出し、もっと強くなった「アフィーラ」が目の前に現れる日が待ち遠しいです。

