
高市首相 憲法発議は饒舌でも、石油危機を招く米・イラン攻撃は語らず
高市首相はトランプ大統領の発言やSNSに反応しません。なぜメディアは高市首相の対応に疑念を示さないか。不思議です。
高市首相は自民党大会で憲法改正の発議に関して、あれだけ饒舌に語っています。国民の心をぐっと掴む高市流の語り口は、突然解散した衆院選挙の大勝利で証明されています。台湾有事に勝るとも劣らない石油危機の可能性が高まっている今こそ、日本はどう窮地を乗り切るのか。多くの国民が高市首相の考えと覚悟を知りたいはず。
米国のイラン攻撃は中東産油国と消費国を結ぶ要衝のホルムズ海峡閉鎖を招き、アジアを中心に過去最悪の石油危機に追い込まれる恐れすらあります。石油・ガスのほとんどを中東に依存する日本が傍観できるわけがありません。
トランプ大統領の発言に反応せず
米国のイラン攻撃で深刻化する石油不足は、過去の石油危機と全く違います。イスラエルとアラブ各国で繰り返される地域紛争を軽視するわけではありません。1980年代のイラン・イラク戦争、1990年の湾岸戦争でもホルムズ海峡は一時封鎖されましたが、戦争下で被害を受ける地域、施設は限定的でした。イランは反イスラエル勢力を支援しているとはいえ、前面に出ることが少なく、米国と真正面から衝突するのは1979年のイスラム革命で敵対関係になって以来、初めてといってよいでしょう。
イランは米国が地上戦も展開したイラクやアフガニスタンと比較にならないほど強靭な軍事大国です。トランプ大統領はイラン国内の発電所、石油施設などを攻撃して、「石器時代に戻す」と恫喝していますが、イラク、アフガニスタンですら完全制圧できなかった米国です。イランとの全面衝突は過去の石油危機を遥かに超えるパニックを世界で引き起こし、長期化するかもしれません。
日本を名指しで非難
しかも、トランプ大統領は日本を名指しで再び非難しています。4月12日、イランから核問題について合意が得られなかったことを理由に「イランが自分たちに都合の良い相手にだけ石油を売って利益を得るようなことは一切認めない」と述べ、米国自らホルムズ海峡を封鎖すると表明。さらに日本や韓国を名指しして「エネルギー需要の大部分を海峡に依存しているが、彼らは我々に協力しようとしない」との不満を示しました。
日本、韓国は米国の同盟国です。日本は憲法によって戦時行為に関わることは不可能であり、日本が協力できる範囲は限定的であることは米国も十分に理解しています。高市首相が訪米してトランプ大統領と会談した際も、日本の立ち位置を説明しています。米国が勝手に、しかも密かに仕掛けたイラン攻撃であるにもかかわらず、日本、韓国、オーストラリア、欧州各国が手を貸さないと繰り返し非難する姿は理解できません。
高市首相が米国との同盟関係を配慮して直接的な発言を控えているのかもしれませんが、言われ放しはないでしょう。日本は米国の属国ではありません。
日本はイラン攻撃、ホルムズ海峡封鎖の危機にどう立ち向かえばよいのか。高市首相は自ら語る時は今しかありません。
日本経済を支える原油輸入は全体の95%を中東地域への依存しており、9割はホルムズ海峡を経由するタンカーが輸送しています。高市首相はイラン首脳と電話会談するなどホルムズ海峡の安全確保に向けて努力していることは承知しています。ただ、外交努力しているといっても、原油輸入が遮断してしまえば日本経済は大混乱に向かいます。
安心を繰り返しても、安心できない
政府は石油備蓄の放出に続き、来年の年明け以降も石油は確保していると強調しますが、石油やガスは人間の血流と同じで常に循環しているのが大前提で、来年年明けまでは大丈夫と説明しても、買い占めや供給の手詰まりなどで不必要な危機感を煽る結果を招きます。「安心してください」を繰り返すだけでは、だれも安心しません。如何なる事態に直面しても、どう対応するか。日本の安全保障を背負う高市首相の言葉を聞きたい。

