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クルマと街が新しいエンターテインメントを創るか

ホンダが消える20「ねじ式からレゴ式へ」 ソニー・レゴと拓く100万円EV

もちろん、計画はこれから実践されるものです。過去がダメだったから今回もという結論はありません。しかし、過去に多くの教訓があります。三菱重工業のビジネスジョット「MRJ」を見てください。1兆円を投じて国の後押し受け、「YS11」に続く悲願達成に向けて長年試行錯誤しましたが、まだ空を飛べません。ところがホンダのビジネスジェットは大成功です。開発の発想を変え、本田宗一郎の夢を見事に実現、しかもビジネスジョットとしては大ヒットです。ホンダは新規事業の成功は巨額投資に頼るだけではダメと自ら証明しているのです。

電池開発の歴史は、革新的な発明の可能性を示している

「実は技術は進化していないものがたくさんあるのです。電池を見てください。その原理は200年前に発明されたボルタの法則から変わっていない。でも、それは革新的な発明ができる可能性があるということです」。ソニーで電池を研究していた技術者の弁です。直後にソニーは91年、世界で初めてリチウムイオン二次電池を商品化しました。。しかし、リチウム電池の競争で一度脱落します。革新的な発想でブレイクスルーしても、事業に成功するわけではないことも立証しています。

それではEVの革新的な発想の転換とは何か。4月11日に発表された米エピッック・ゲームズの増資がとても興味深いです。同社は人気戦闘ゲーム「フォートナイト」を開発、大ヒットさせており、これまでもソニーの出資を受けていますが今回はソニーと玩具レゴの親会社であるキアクブがともに10億ドルを出資します。エピックを介してソニーはレゴと至近距離の関係になります。

ソニーはホンダとEVを共同開発すると発表したばかりです。ソニーはエピックやキアクビなどと次世代ゲームの開発を加速するでしょうが、レゴで培われたユニークな発想を学び、取り込むチャンスを得ました。玩具レゴのようにパーツを組み立ててクルマを完成させる生産方式を開発してもおかしくありません。EVの部品点数はエンジン車と比べて大きく減りますし、パーツの塊に構成しやすいはずです。数年後に玩具レゴを楽しむようにホンダのEVが工場から姿を現すかもしれません。

 つげ義春の「ねじ式」という傑作マンガを知っていますか。主人公は怪我をした血管をネジで締め付けて止血し、命を守ります。日本の自動車産業は数えきれないほどのネジを使ってクルマを組み立ててきました。ホンダは100万円台のEVを投入すると発表しています。それは自動車産業の根幹である「ねじ式」を捨てて、玩具レゴの発想をもとにソニーと共同開発したクルマかもしれません。レゴ式が電気自動車の量産モデルを創造するのです。

「ねじ式」から「レゴ式」へ。ホンダがソニー、レゴと組んで新しいEVのビジネスモデルを創造するゲームはとても楽しいものになるに違いありません。

 

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 吉野浩行さんが2022年4月1日にお亡くなりになられたとの報を聞き、拙文をここに加えます。

 日経新聞時代、吉野さんには取材でたいへんお世話になりました。もう30年以上も昔の話ですがホンダ担当記者として取材の夜回りで埼玉県のご自宅をお訪ねしたことがあります。地図で何度も確認するのですがご自宅をなかなか見つけられず地元の消防署でようやく自宅場所への道筋が判明しました。お宅でお会いした吉野さんは「この場所はなかなか見つけられないんだ。よくたどり着いたなあ」と笑いながら出迎えていただき、直面する経営問題について率直な意見を聞かせていただきました。質問に対してまっすぐ受け止めて答えてくれるので、ホンダが進もうとする方向性がとても理解しやすく、その後の取材や記事執筆で何度も助けていただきました。

 社長時代(1998年から2003年まで)もその姿勢は変わらず、言動にブレがありません。気持ちが良いぐらい剛球を投げてくれます。その剛さが強引に映り、ホンダ社内でも批判を浴びることもありましたが・・。私は時々お会いしてはホンダの立ち位置を確認させていただき、記事の方向性を決めました。

 忘れられないのは私が司会するシンポジウムへの出席を快諾していただき、環境問題に対する考えを述べられた時でした。シンポジウム参加者からトヨタのハイブリッドシステムをどう考えるかを質問されたのです。「ホンダでも研究開発を進めている」というコメントで終えるのかなと思ったのですが、「内燃機関のエンジンが最もエネルギー効率が良い」と持論を強い調子で述べられ、ハイブリッドエンジンシステムにあえて消極的な見方を示したのです。驚きました。当時すでに内燃機関エンジンだけでは対応できないとの意見が大勢を占めていました。にもかかわらず、あえてエンジンの優れた特性を強調しました。思わず「エンジンの方が優れているということで良いのですね」と重ねて確認したほどです。「エンジニアとしての信念を貫く吉野さんらしいなあ」と思った瞬間でした。

 改めてお礼を申し上げます。ご冥福をお祈りします。

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