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遠軽町はうまさもスイッチバック、焼き鳥も店創りも東京・神楽坂に負けない! 

 遠軽町で「昭和」の居酒屋を堪能した後、マイナス10度以下の夜をぶらぶらしました。コマイもチカも日本酒も満喫しましたが、「オホーツク=海産物がうまい!」に満足するわけにいきませんでした。たまたま訪れた「旅の人」の勝手な思い込みに安住する街と思えなかったからです。もっと歩き回ろう〜

夜、美し輝く教会

 JR遠軽駅前を走る大通りに出たら、美しく輝く教会が待っていました。キリスト教と仏教の教会が隣り合い、有名な観光名所となっている函館で育ちましたが、夜のライティングでこんなに映える教会を久しぶりに見ました。お昼にも教会の前を通っていたのですが、こんなに昼と夜で大きく変わるなんてちょっと衝撃です。もっと歩き回ろう〜

 再び、ビンゴ!でした。「素敵」という言葉がピッタリの焼き鳥の店に出会ったのです。味はもちろん、お店創りも洗練されています。北海道→オホーツク→海産物がうまい→昭和の香りというステレオタイプを見事に覆してくれました。

 店内は日曜日の夜だったせいか、お客さんはまばら。お店のドアを開けた瞬間、ここは焼き鳥屋さん?と思うオシャレなエントランス。独り客ですからカウンター席に向かうと、2席ごとに仕切る板が設置されています。初めて見ました、そして「やるなあ〜」とピンときました。

コンセプトは若い世代に振り切る

 焼き鳥屋さんの醍醐味は狭いカウンター席にずらりと座って鳥を焼く煙にまみれ、お酒を飲む「近すぎる距離感」にあります。でも、逆に鬱陶しさも感じます。若い人なら、なおさら。私も含めた昭和をプンプンさせる周囲の年寄りに邪魔されずに2人の世界に没入したい。叶えてやろうじゃない!思い切ったレイアウトに店主の店創りの気合いを覚えます。

 メニューも振るっています。焼き鳥屋さんらしい盛り合わせから凝った調理を加えた1品まで豊富に揃えていますが、ほとんどは焼き鳥を基本にしながら、いろいろな味付けで目新しいアラカルトを創作しています。色々試してみたいのですが、今夜2件目ですし、初めてのお店なのでとりあえず焼き鳥とレバーを注文。

 飲み物のメニューも振り切っています。ビール、焼酎、日本酒、サワーなどすべて揃えていますが、主力はハイボール。種類がとても充実。「へえ〜」と感心しながら、メニューから視線を上げたら、目の前のカウンターにはウイスキー、バーボンがずらり。どれも高級すぎず、安価すぎず。「ちょっと贅沢してみるか」と言って注文する銘柄がほとんど。

 カウンターからガラス越しに店主が炭火で焼く姿が見えます。串1本の焼き具合を見極める所作に真剣さが伝わってきます。目の前に差し出された焼き鳥の表面はきれいに処理されており、もう50年も焼き鳥を食べ続けてきた酔っ払いも食感、食味に大満足。お店は斬新でも手仕事はていねい。年老いた酔客は参ったというしかありません。

ビール、焼酎は廃れ、ハイボールの時代に

 周囲にお客さんがいないので、店主とカウンター越しに雑談できる機会がありました。「目の前に並ぶウイスキーやバーボンは学生の頃からよく飲む大好きなものばかり。でも、今の若い人はアルコール離れしており、最初の乾杯もカシスソーダって感じでしょ。ウイスキーに戻ってきたの?」

 若い店主さんは笑いながら、最近の若者の嗜好を教えてくれました。「今はビールも焼酎も日本酒も人気がなくなり、もっぱらハイボール。こうしてウイスキーやバーボンのボトルを並べているのも、ハイボールを注文する際の参考にしてもらうためです」

 改めて店内を見渡すと、ライティングも含めてお店のコンセプトは「バー」。しかも、喫煙OK。北海道では喫煙OKのお店が多いですが、HPには家族連れ、未成年者はお断りしていますと明記しているのには驚きました。

 かなりの挑戦です。なにしろ遠軽町は人口1万7000人程度で、北海道ならどこも同じ人口減と高齢化が止まりません。訪問する観光客も札幌市や旭川市と違い、桁違いに少ない。

 若い世代に焦点を合わせた「焼き鳥屋さん」をめざす意気込みに脱帽しますが、客数の底上げはなかなかたいへん。店主さんは「価格を極力抑えたいので、原価率は高いですよ」と苦笑します。酔った勢いで「東京の神楽坂に出店したら、かなり儲けるんじゃない」ととぼけたことを言ったら、「家賃も人件費も桁違いに高くなり、とてもとても」と周囲のスタッフも含めて大笑いしました。

大通りを歩けば、たばこの自動販売機がしっかりあります。

遠軽はスイッチバックの街

 コマイとチカ、その次は東京・神楽坂でも成功すると思わせる焼き鳥屋さん。さすが遠軽町は全国でも数少ないスイッチバックの街です。見事に一晩で全く逆方向の居酒屋さんを満喫できした。

 知っていましたか? 遠軽駅は北海道で唯一スイッチバックを体験できる駅です。JR北海道石北線で旭川駅を出発し、北見、網走方面に向かった列車は遠軽駅に到着すると、「周りのお客様とお話しして座席の向きを進行方向に変えてください」と車内放送が流れます。

 かつて名寄本線と石北本線が接続する交通の要衝だった名残りで、旭川方面から網走方面へ向かう列車の線路は行き止まり。駅構内の線路はY字型に配列しているので、一度入線した後に逆方向へ出発する形になります。北海道唯一のスイッチバックは鉄道マニアじゃなくても、一度訪れたら忘れられませんよ。

 遠軽町はやっぱり懐の深い、魅惑の街でした。訪ねて良かった!

 

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