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水浴びする水牛

ポカラ 激流を吸い込む滝 村上春樹の「世界の終わり」の脱出口に向かう ナマステ④

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「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」には「太った娘」と「図書館の女」の2人が登場します。村上春樹さんの小説に登場する女性は強い個性の持ち主として描かれることが多いです。言わずもがなです。血液型の性格判断で説明されるような定型の人格などあり得ません。赤ちゃんの頃から喜んだこと、傷ついたことなどいろいろ心に染み込んだことが考え方、言動に現れるのですから。誰だって豊かな個性を備えています。

「世界の終わり」の舞台に上がる二人の女性は、アカデミー助演賞を受賞するかのような力量で演技します。もちろんディレクターは村上春樹さん。彼自身が魅力を感じるテイストで身動きしており、好きな味付けです。

私自身、右に左にぶつかり合っている女性が好きです。異性の相方もそう思っているかもしれませんが、異性の考え方、言動を互いに理解するのは難しい。そして、私の結論はいつも独りでいる方が楽、に落ち着きます。

しかし、いくつかの作品を読み進むと女性を描くネタが切れてくるのですかね。「1Q84」の女性はなんか現実味を感じませんでした。インストラクターの「青豆」役の女性は、「こう描くだろうなあ」という期待通りに物語が進んでいきます。

頭の片隅に「ここまで演じないと読者が喜ばないだろう」という作家の欲を知る女性が期待に応える言動に終始する印象です。小説家としての想像力の枯渇を感じました。それとも好みの差でしょうか。穿ち過ぎかもしれませんが、登場する女性がいかにもアメリカの探偵小説に醸し出される空気を纏っている気がします。

 

レイモンド・チャンドラー、スコット・フィッツジェラルドら。彼らの小説から漂う香水が匂います。私は米探偵小説で面白いと思って読めるのはダシール・ハメットだけ。理由はわかりませんが、ハメットだけがあの世界に入れいます。チャンドラーやフィッツジェラルドは肌が合いません。だから、村上春樹さんの小説を読み進むにつれ、登場する女性のキャラクターに満腹感を覚えます。

「ノルウェーの森」の女性はとても魅力的だったのに、残念です。村上春樹さんが「本当に好きな女性」を描いたからだと思う半面、米国の小説を翻訳した小説家らしく、その経験から派生する想像か妄想かで誕生する女性が小説での存在を誇示するのでしょうか。「1Q84」ではちょっと興ざめしかけた時がありました。

「1Q84」の女性像にはちょっとがっかり

しかし、もう一人の女性に見事に引っ掛かってしまいました。「1Q84」には健常児のような読み書きや記憶ができず、興味のあることを丸ごと暗記してしまう女性が現れます。私も同じ性向があります。歴史がとても好きでしたが、教科書的なつまみ食いした勉強方法では全く頭に入りませんでした。

歴史の年表を最初から最後まで年代ごとに覚え、日本史でも世界史でもかなりの古代から連続して読みまないと理解できないのです。成績は良かったですよ(笑)。

今はディスレクシアという言葉で説明されていますが、私と同じような人間が登場したので、彼女の心の内や言動に苦笑しちゃいます。「わかる、わかる」「だろうね」の繰り返しです。村上春樹さんのフックにハマり、最後まで読み続けました。とても失礼ですが、やはり上手い書き手です。

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強い日差しを避けて大樹の陰に

ポカラのカフェで瞳が輝く美しい少女に出会えたのが確信になりました。きっと今日はおもしろいことに出会える。しばらく歩くと広場が目の間に待っていました。真ん中には大木が立っています。大きな枝振りの木の下にたくさんの人が集まっています。ほとんどの人は木陰に入っています。

なぜ木陰にいるのかを気づくべきでした。地元住民が当たり前のことが旅行者には全くわかっていない典型です。それはともかく、木陰の中心には男性一人が熱心に身振り手振りで語っています。ネパール 語はナマステぐらいですから、何を話しているのかわかりません。ただ、彼は片手に薬箱のようなものを持っており、聞いているみんなは笑ったりフンフンと小首を振ったりしています。東京・秋葉原の実演販売を見ているかのようです。訳はわからないのですが、見ているだけでも時間が過ぎていく説得力が伝わってきます。伝説のプロによる実現販売だったかもしれません

大木の下で口演

大木の下で口演

 

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