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軍産複合体の亡霊が歩き回る 三菱重、川重、IHIなど防衛産業と二人三脚

「軍産複合体」。こんな言葉を知っていますか。政府と軍隊、さらに軍需産業が一体となって軍事力拡大に突き進む政治的な構造を意味しています。

 1961年1月、米国のアイゼンハワー大統領が退任演説で、この軍産複合体の危険性を指摘し、自由や民主主義を守るために影響力を排除しなければいけないと警鐘を鳴らし、注目される言葉となりました。

アイゼンハワー大統領が警鐘

 アイゼンハワー大統領は第二次世界大戦で欧州戦線の連合国最高司令官を務め、米国民から英雄として高い人気を集めていました。そのアイゼンハワー氏が当時の冷戦下で進行する軍隊と軍需産業の癒着は民主主義を危うくすると批判したわけですから、米国の政治、経済に与える軍需産業の影響力は凄まじかったのでしょう。

 中学生の頃、岩波新書「軍産複合体制」(1971年版)を読んだ知識をひけらかしたくて、近代史の授業中にわけ知り顔で「日本は軍産複合体制になってはいけない」と喚いたことがあります。「みんな知っている?」とドヤ顔したら、同級生のみんなは予想外にも「ホゥ〜」と驚いてくれました。実態を知らずに知識だけを披露する衒学の典型。とても恥ずかしい思い出です。

 半世紀も過ぎた今、日本で軍産複合体が亡霊のように歩き回るとは思いもしませんでした。

 三菱重工業、川崎重工業、IHIの防衛産業を代表する3社をめぐるニュースが飛び交っています。人工知能(AI)、半導体を軸に過熱する株式市場の陰に隠れて目立ちませんが、防衛産業の関連銘柄は中長期的には「買い」とみられています。

防衛予算は膨張、防衛産業は潤う

 なにしろ、防衛産業は政府から潤沢な資金が流入し、着実な成長が期待できるのですから。政府は2023年度〜27年度までの5年間、研究開発や公共インフラを含む安全保障関連費を43兆円と従来の1・6倍も大幅に増額。最終年度の2027年度には防衛費を「GDPの2%」をめどに引き上げる方針です。金額で見れば防衛省単体で9兆円近く、関連を含めると総額で11兆円に膨らみます。

 海外の防衛産業との協力もどんどん拡大しています。日本は戦後、武器輸出を制限していましたが、2014年に「防衛装備移転3原則」をまとめ、同盟国との防衛協力を名目に輸出を解禁しました。従来の米国以外に英国、フランス、イタリア、ドイツなど欧州、準同盟国のオーストラリアを加えて多くのプロジェクトが動き始めています。

 最先端の兵器開発の主役は防衛産業が担う訳ですから、三菱重工、川崎重工、IHIなどに新規事業が次々と舞い込むのも当然です。政府が後ろ盾の防衛関連の資金やプロジェクトが突然頓挫する可能性は低く、「当たるも八卦、当たらぬも八卦」とバタバタするソフトバンクと違って安定した業績予想が期待できます。「年金以外に老後の資金を手当するなら、三菱重工の株式を保有すること」と豪語する知人もいます。

 直近のニュースをみてみます。川崎重工は欧州航空大手エアバスと防衛分野の無人機(ドローン)で技術提携します。エアバス主体の欧州3社で開発する「ユーロドローン」に川崎重工の対潜水艦作戦向けシステムなどを搭載する考えです。ロシアとウクライナ、米国とイランの戦争ですでに明らかになっている通り、最前線の先兵はドローンが担っています。

 次世代戦闘機の開発でも日本、英国、イタリアで共同開発する「GCAP」が注目を浴びています。日本側は三菱重工や三菱電機など、英国はBAEシステムズ、イタリアはレオナルドとそれぞれの国で軍需産業を主導する企業が参加しています。次世代戦闘機はフランス、ドイツ、スペインの3国も独自に共同開発していましたが、計画は頓挫。日本、英国、イタリアのプロジェクトにドイツ、カナダ、オーストラリアが参加する可能性も出ています。

 護衛艦でも協力は広がっています。イージス艦は米国との関係もあって輸出できませんが、日本と準同盟国であるオーストラリアは、三菱重工が建造する「もがみ型護衛艦」を海軍の次期フリゲート艦として採用しました。日本とオーストラリアはアジア太平洋の安全保障で深い信頼関係が構築されており、軍需産業の具体的な事例はさらに増えそうです。

知らず知らずのうちに軍民一体

 防衛予算の膨張に支えられて防衛産業の裾野が広がれば、知らずしらのうちに兵器開発に巻き込まれる企業が増えるでしょう。

 大学など研究者も同様です。自民党は「軍事目的のための科学研究は行わない」を堅持する学術会議を批判しています。軍民両用技術の推進、防衛産業との協力を広げれば安全保障戦略を支える力になると説明します。

 このまま軍産複合体の影は着実に大きくなってしまうのでしょうか。

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