日銀

米国が羽交い締めする日銀・金融政策「責任ある積極財政」の末路が見えてきた

 日本の金融政策が米国に羽交い締めされてしまうのでしょうか。

 7月31日、日米の金融当局が為替介入して円買いを実施しました。1ドル163円台のドル円相場は155円まで一気に急騰。ただ、勢いはここまで。その後は円安へ振れ157円台を行き来しています。財務省の三村淳財務官は8月3日、日米による円買いの協調介入について「日米通貨同盟の完成形だ」と自画自賛しましたが、果たしてそうでしょうか。

28年ぶりの日米協調介入

 日米の協調介入は、東日本大震災に伴う円高阻止を目的にした2011年を除けば山一証券などの破綻で金融危機に揺れた1998年以来28年ぶり。歴史的な円安を是正するために歴史的な日米の協調介入に踏み切ったわけです。投機筋に対する強いけん制となったものの、為替市場には日米による協調介入の実効性を冷静に見極め、円安の流れに大きな変化はなく、歴史的な円安の転換と見る向きは多くありません。

 むしろ、注目は米国の金融当局が日本の金融政策に手を突っ込み、日銀の利上げを強烈に迫っていることでしょう。意図は明確です。ベッセント米財務長官は4日の米CNBCテレビのインタビューで「相場の流れを変えるのは政策」と答え、日銀の植田和男総裁の名前を挙げて「実行すると信じている」と強調しました。まるで米国のFRBに向かって言い放っているかのようです。

 日本の金融当局も十分に理解しています。「積極財政と金融緩和はやめろと言っているのに等しい。米国は介入では日本に協力したが、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)の転換を求めている」と述べ、米国が高市政権が進める「責任ある積極財政」の軌道修正を求めていると受け止めています。

米国は日銀総裁を名指しで利上げ迫る

 米国が日本の金融政策の根幹である日銀の利上げ決断を押し付けているにもかかわらず、日本はNOと言えない。本来なら中央銀行である日銀の独立性を重視して明言を避けるべきですが、日本は米国に抵抗するどころか日銀の利上げ決定はやむなしと認めています。残念ですが、米国が日本の金融当局を羽交い締めする姿が目に浮かびます。

 戦後の金融政策を振り返れば、米国が指差す方向に走るのが日本の金融当局でしたから今更驚くことはないのですが、高市首相が連呼する「責任ある積極財政」がいよいよ空疎に響くのが悲しい。

 なにしろ、米国に羽交い締めされるきっかけを招いた歴史的な円安は高市政権が進める「責任ある積極財政」。

 高市首相は2025年10月の就任後、18兆円を超える補正予算を打ち出したほか、ガソリンなど暫定税率を廃止。7月30日には食料品の消費税減税も正式に表明しました。「減税大歓迎」と言いたいところですが、減税分に代わる財源の見通しはなく、議論も宙ぶらりん。

 当然、金融市場は先取りする形反応しています。巨額赤字を抱える日本の財政が一段と不透明になるわけですから、早くから長期金利は上昇。10年物国債の流通利回りは、高市政権発足前は年1・6%前後でしたが、7月に2・9%台と30年ぶりの水準に上昇しました。

目の前の解決に時間を浪費

 米国にも、日本を羽交い締めせざるを得ない事情がありました。米国債の最大の海外保有国である日本が、仮にドル円の介入資金を調達するため米国債を大量売却すれば米長期金利は上昇します。米国は連邦政府債務の膨張で1兆ドルを超える利払い費にあえいでおり、なんとしてでも米国債の売却を阻止する必要がありました。

 高市政権は「責任ある積極財政」を掲げながらも、明確なシナリオを持たずに目の前の問題解決に時間を浪費しているのが実情です。例えば、食料品の消費減税は代替財源確保だけでなく、10%の税率が続く外食産業に大打撃を与えます。中小飲食店は転廃業を強いられ、雇用情勢に悪影響が広がるのは必至です。

 これから露見する経済政策の破綻はまだまだ続きます。どう取り繕うのかの策を持たずに「責任ある積極財政」を謳っても、末路はもう見えているのではないでしょうか。

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