
人口は1984年、ドル円は1986年、生産年齢人口の大幅減が「日本の時代」を逆回転
まるで日本の時間軸が1980年代に逆回転しているようです。
ドル円相場が39年前の1986年に記録した163円台。歴史的な円安に逆戻りしたと思ったら、今度は2026年の人口が1億2000万人を割り込み、42年前の1984年を下回りました。この40年間、日本経済の浮沈を取材、目撃してきただけに、時計の針が映像の早回しのようにぐるぐると逆回転する現実に恐怖を覚えます。
1980年代は世界2位の経済大国
1980年代、日本は欧米を追い、そして追い抜いて世界第2位の経済大国に駆け上がり「栄光の時代」を謳歌しました。1990年代、バブル経済崩壊で日本の構造問題が噴出したものの、「日本経済は今も強い」の幻影から目が覚めず、目の前で加速する少子高齢化を呆然と眺めているだけ。経済成長力はどんどん減速し、2000年代に入って欧米や中国、韓国、台湾などアジア勢にも置いてきぼり状態に。
2026年はインドにも抜かれ、世界第5位の経済規模に後退するそうです。2026年に42年ぶりの1億2000万人割れと39年ぶりの歴史的円安が重なったのは偶然ではないでしょう。謎を解くキーワードは「生産年齢人口」と考えています。15歳から64歳までの働き手が全人口でどの程度占めるか。その国の経済成長力を占う指標の一つです。
1984年は日本の人口動態にとって分岐点でした。人口1億2000万人のうち生産年齢人口は8178万人で全体の68%を占めました。すでに経済成長のエンジンである人口が増え続ける「人口ボーナス期」は終盤を迎え、人口の増加率は1%を切り始めていました。
全人口の減少は2008年から始まるのですが、生産年齢人口は1995年の8717万人をピークに減り始めます。歯止めがかからない少子高齢化によって働き手の若い世代が減る一方、65歳以上の高齢者が増え、人口拡大の恩恵が消える「人口オーナス期」に転じます。その負の効果は歩調を合わせるように日本経済は30年に及ぶ停滞期が続いたことでわかると思います。
生産年齢人口はピーク時から1500万人減少
2026年の生産年齢人口は7250万人で、全体の60%を割り込みます。1984年から900万人、ピークの1995年の8717万人と比べたら1500万人近くもそれぞれ減少しました。
これに対し、65歳以上の高齢化比率をみると、1984年は9・9%でしたが、2026年はほぼ30%に。「人生100年」の時代を迎え、65歳以上の生産能力は決して衰えているとは考えませんが、ただでさえ労働生産性が国際的に低い日本ですから、働き世代が減って高齢者が増え続けてしまえば、日本経済の推進力が衰えるのは当然です。
2000年以降の日本経済をみてください。見事に活力の衰えが読み取ることができます。1990年代まで世界をリードした自動車、電機は成熟期に入り、2026年現在で最も世界経済を牽引する半導体、人工知能(AI)では遅れをとっています。日本政府は半導体、人工知能を軸に世界トップへの復帰に躍起になっていますが、残念ながらライバルの背中はまだ遠い。
歴史的円安は成長力を不安視
生産年齢人口の大幅減で日本経済の実力、歴史的円安を説明するのは暴論と思うかもしれません。円安の主な要因は日米の金利差、緊張する中東情勢によるエネルギー価格の高騰、高市首相が掲げる積極財政・緩和的な金融環境への不安などで説明されますが、果たしてそうでしょうか。
わかりやすい例は政府・日銀のドル円介入でしょう。7月末、4月以来久しぶりにドル売り円買いを実施して一時157円まで高騰しましたが、すぐに160円台に戻ってしまいました。
外為相場は正直です。日本経済に力があると確信すれば、政府・日銀の円買いに乗じて円高を演出しますが、どうみても先行きは円安基調。力強さを感じない日本経済の実力を冷静に見定め、食品の消費減税など高市政権の危うい経済運営を天秤に載せれば、目盛は円売りへ傾きます。
悲しいですが、円はドルだけでなくユーロ、中国元など多くの通貨に対しても価値を下げており、トルコ・リラ並みに見る向きもあります。
外国人を成長エンジンにできるか
人口動態で見落とせないのは外国人の増加。2026年は403万人の過去最多です。外国籍の住民は86%が生産年齢人口とみられ、深刻な人手不足に悩む日本の経済や地域サービスを支える不可欠な働き手となっています。
新たな「日本の時代」をどう創造するか。外国人をめぐる移民政策が重要な鍵になるのでしょう。

