東ガス・エネファーム10年に学ぶ 省エネ、災害リスク分散は単純明快が最も賢明

 東京ガスの「エネファーム」を10年間使用しました。「世界初の家庭用燃料電池を使った画期的な省エネルギーシステムを体感してみたい」「大震災などで電気、ガスのライフラインが遮断されても、自宅だけはエネルギーを確保しておきたい」。かなり高額でしたが、設置を決めました。

 エネファーム。2009年5月、世界初の家庭用燃料電池として発売されました。ガスから水素を取り出し、空気中の酸素と反応させて発電し、発生する熱を使ってお湯を沸かします。電気と湯を一石二鳥、というわけです。設置を決めた10年前は、「電気代、ガス代も含めれば、割安になる」と東京ガスの担当者は自信満々で勧めていました。

 しかも、環境にやさしい。エネルギー効率が高いので、化石燃料の燃焼で発生するCO2を削減できます。 災害や突然の停電でもガスが供給していれば、発電できます。蓄電もできますから、万が一の災害時でも安心です。高い買い物をしても、なんか罪悪感がない。

 でも、やっぱりガス給湯器に比べかなり高額です。燃料電池単体はもちろん、給湯器と連結するパイプ工事が加わり、国の省エネ補助金などを利用しても総額でガス給湯器の倍以上だったと思います。価格表を見てクラっと眩暈がしましたが、ガスで自家発電するので電気代は抑えられるので「10年間の長期使用を考慮すれば高額の設置費用は回収できる」と説明する東京ガスを信じました。

 幸いにも大きな災害に見舞われることなく平穏な省エネ生活を送ることができましたが、ちょっと複雑な思いが残ります。設置工事や修理手配などメンテナンスを含めた費用対効果、そして使い勝手を考えれば、期待したほどの満足感は得られませんでした。エネファームは設置から10年間すぎると、修理の無償保証期間が終わります。設備を更新するかどうか検討しましたが、結論は更新見送り。通常の給湯器に切り替えることにしました。

 なんとなく胸の内に残るモヤモヤ感を10年間を通じて得た学びとして綴ってみました。(注;個人の感想です)

学び1;省エネ効果のお得感は電気代、ガス代を合計しても実感できない。

 理由は簡単。ガス代はエネファーム契約によって別の料金体系で換算されるので、ガス給湯器単体とは比較できません。むしろ、燃料電池がガスを消費するので、ガス代は金額上高くなっていたようです。その割り増し分だけ電気代が安くなったのかといえば、こちらも実感できません。照明やエアコンは通年で使用しますが、その年によって使用量は異なります。

 電気、ガス込みで計算したエネルギー費用は抑制できたぐらいは実感したいじゃないですか。「エネファーム」と「ガス給湯器」と分けて年別の総額比較できれば簡単です。東京ガスの業務はデジタル化しているので、自宅のガス消費量をデータを基に「なんとかエネファームとガス給湯器の場合に分けて比較計算できないのか」と訊ねても、答は「できません」。

 にもかかわらず「ここ数年の電気代は高騰していますから、10年間のエネファーム使用で得しているはず」とデータ提示もせず、生活実感だけで強引に「エネファームはやっぱりお得」を演出する担当者がいます。呆れました。10年前のセールストークを鵜呑みしてはいませんが、東京ガスは東京電力と並ぶ公共性の高いエネルギー会社です。中小の工務店に屋根の工事の見積もりをお願いしているわけではありません。少しぐらい信頼できるデータを提示して欲しかった。

学び2;運転、修理は予想以上に手間

 とにかく手間が増えました。室内に設置した運転操作盤には故障が発生すると暗号のような文字と数字が表示されます。その暗号を取り扱い説明書から見つけ、どんな故障が起こっているのかを調べます。その後、東京ガスに連絡して故障の原因を突き止め、工事の業者さんが自宅へ訪れるのですが、それなりの日数を要します。その期間は燃料電池は機能しませんから、発電は無し。給湯器は機能しますから生活に不自由はないのですが、修理が終わるまで「エネファーム」の最大の売りである電気とお湯を一石二鳥する恩恵も無しです。これじゃガス給湯器を購入したのと同じ。

 故障は経年劣化と比例して頻発します。部品交換も増えます。操作盤の警告を見つけ、東京ガスに連絡。修理する工事会社からの電話と日程調整。修理は無料ですが、結構時間が取られます。東京ガスへの連絡回数は右肩上がりに増え、無償修理期間が終了する10年目が近づくとさらに増えていきます。まるで部品の生命維持装置が次々と壊れていくようです。だんだん「エネファーム」の世話係になった気分になり、苦笑せざるを得ない時もありました。

学び3:個人なら、自分のライフスタイルに合わせてエネルギーインフラを選択するのが賢明 

 「エネファーム」の更新を諦めた主因は高額の費用。ここ数年の諸物価高騰もあって10年前に比べ予想以上に膨らんでいました。燃料電池はパナソニックとアイシンの2社が製造していますが、アイシン製は200万円程度。車一台分です。とても手が出ません。パナソニックはちょっと割安ですが、驚いたことに東京ガスの担当者はパナソニックは勧めません。とにかく評判が悪いのです。東京ガスと燃料電池のメーカーとの信頼関係の無さが感じられ、エネファームの事業モデルにも疑問が湧いたほどです。

 エネルギー源を自分のライフスタイルに合わせて設計できる時代になったこともあります。「エネファーム」発売当初は、燃料電池そのものが進化の途中で今後の可能性に期待できたほか、地球温暖化防止に伴うCO2の排出削減、さらに震災時の停電、ライフラインの断絶など多くの課題をクリアするエネルギーシステムと評価されていました。国が多額の補助金で普及を手助けしたのも理解できます。

 しかし、2026年の今は、当時と大きく様変わりしています。太陽光発電などが普及し始め、災害に強いライフラインの更新も進んでいます。停電時の電気供給についても電気自動車(EV)が蓄電池代わりとして利用できるますし、容量の大きい家庭用バッテリーも発売されています。

 家族構成の変化もあります。「エネファーム」を設置した当時は家族数が多く、エネルギー消費量も膨らんでいましたが、子育て終了とともに消費量も消費する時間帯も変わりました。環境とエネルギーのデパートとも言える「エネファーム」はもう過剰で、費用対効果を考えてガス給湯器を軸に必要な防災機器を揃え、万が一に備えるのが賢明な選択だとわかりました。

学びの結論

「エネファーム」の学びは今、東京都が新築住宅に義務付けしている太陽光発電にも通じます。家族構成やライフスタイルによっては、必要しない過剰な発電設備になったり、逆に余計なエネルギーコストを増やしたりする恐れがあります。すべての買い物に通じることですが、身の丈に合わせて衣服や食事、住宅を選び、生活するのが最も省エネであり、環境にやさしいことだとわかりました。

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