JR北海道 札幌圏が初黒字 道北・道東は赤字拡大 人口減社会の近未来を投影

 悪戦苦闘するJR北海道は、まるで人口減社会に歯止めがかからない日本の近未来を投影し、諭しているかのようです。

札幌圏はインバウンド、日本ハム球場効果

 久しぶりの明るいニュースでした。2026年3月期決算で札幌圏4線区が初めて営業黒字になりました。国鉄民営化後、旅客鉄道6社の中で最も厳しい経営を強いられるといわれていましたが、予想通り全20線区で営業赤字が続き、鉄道事業の存続は危ぶまれ、国の補助金と駅前ビルなど不動産事業でなんとか帳尻を合わせてきました。

 ところが、2026年3月期は運賃改定効果もあって、札幌圏は前年度の12億円の営業赤字から22億円増の9億7000万円の黒字へ一転しました。

 札幌圏4線区は千歳・室蘭線の札幌・白石〜新千歳空港・苫小牧、函館線の小樽〜札幌と札幌〜岩見沢、札沼線の札幌・桑園〜北海道医療大学。いずれも乗降客数が順調に増えています。例えば千歳線・室蘭線は世界から北海道を訪れる海外の観光客の増加によって新千歳空港の利用は好調に推移しているほか、プロ野球の日本ハム・ファイターズが新たに建設した北広島市の「エスコンフィールド北海道」がオフシーズンでも多くの人が立ち寄る大人気を集めています。

 国内外から押し寄せる観光客は、札幌市以外でも小樽市、国際的なリゾート地のニセコエリアにある倶知安町などの駅でもJRを乗降します。千歳市には半導体の日の丸プロジェクト「ラピダス」の工場が建設され、周辺地域には半導体の関連企業が進出しており、ビジネス客の利用が着実に拡大しています。

千歳は半導体ラピダス、余市はワイン

 札幌圏は今後も確実に伸びます。その可能性を教えてくれるのは、公示地価や路線価で全国トップクラスの高騰です。インバウンドをにらんだ高級ホテルやタワーマンションの建設ラッシュが続いているうえ、マンションや戸建てが値上がりしている札幌市から周辺自治体へ住居を移す動きが広がっています。

 新たな観光需要も育っています。余市町がフランス・ブルゴーニュの高級ワイン醸造地のジュブレ・シャンベルタン村と提携するなど余市町から岩見沢市まで一帯が世界的なワイン産地として注目され始めています。北海道には元々、豊富な海産物、農産物に恵まれていますが、そこに世界でも高い評価を得るワインが加われば、スキーリゾートとして名を馳せるニセコに負けない「食のリゾート」に浮上するはずです。

 札幌市と特急で1時間半で結ばれる旭川市も、札幌圏と同じ波が押し寄せます。国際的なスキーリゾート開発が始まっており、すでにニセコに飽きた海外のスキーヤーやスノーボーダーがどんどん増えています。

 もっとも、JR北海道の近未来は楽観できません。

運営困難の線区は8線区

 JR北海道に「黄色線区」と呼ぶ赤字の8線区があります。JR北海道が単独で維持するのは困難と判断、自治体などと連携して存続の道を模索する線区を黄色で分類しました。8線区は宗谷線(名寄ー稚内)、石北線(新旭川ー網走)、富良野線(富良野ー旭川)、根室線(滝川ー根室)、釧網線(東釧路ー網走)、花咲線(釧路ー根室)、室蘭線(沼ノ端ー岩見沢)、日高線(苫小牧ー鵜川)。いずれも道北、道東の地域に偏っています。

 北海道の主要都市を結び、通勤通学のほかに北海道を訪れる外国観光客も利用する路線ですが、利用客減少に歯止めがかからず営業収益は26億円と微減。宗谷線の災害普及費用などが加わり、営業赤字は前年より7億8000万円多い156億円に膨らみます。JR北海道の事業規模は1656億円、営業赤字は408億円ですから、とても支えきれません。

 JR北海道の業績は、北海道のみならず日本の地方が直面する「明日」を語り、近未来への課題を提示しています。北海道の人口は1997年の570万人をピークに全国最速のスピードで人口減が進み、20205年は500万人を切りました。札幌市でさえわずかに人口が減少、道内179市町村のうち84市町村が10%以上も減少しています

 JR東日本が民営化後、初めて運賃を引き上げましたが、人口減による利用客の落ち込みが原因の一つです。日本の地方は北海道と同様、人口減に伴い自治体など公共・福祉サービスに支障をきたし、地域社会の基盤が崩れ始めています。なんとか地域経済を維持しようと考えたら、海外の観光客や移民に頼らずを得ません。

 JR北海道を対岸の火事と眺めている余裕などはないのです。

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