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JR双葉駅の時計は2時46分に止まったまま 避難解除後、希望のとびらが開き、針が動く時は

 自分の車に乗り、双葉町内を走りました。11年以上も暮らしていない地域です。木々や植物に埋め尽くされている家屋、朽ちた建物。立派な玄関を備えた建物があったので荒れ放題になった病院かなと思って確かめたら東京電力の独身寮でした。

 もし福島第1原発事故がなければ、週末は賑やかな声がこだましていたのか。近所の家々でも夕飯を食べながら、テレビを見ていたはずです。玄関や庭はいつもきれいに手入れされているので、伸び放題に育った木々や植物があるわけがない。

「福島第一原発」の次に「長者原」の道路標識

 大熊町に向かう途中、福島第1原発周辺を走りました。フロントガラス越しに福島第一原発の道路標識を見つけました。「ああ、ここかあ」と思った瞬間、次に見えた道路標識が「長者原」。

 40年ほど前に福島第1、第2原発ともに取材した経験がありますから、同じ道路を走ったのは間違いありません。全く気づかきませんでした。道路標識の並びはなんということか。当時、原発は立地自治体に億単位の電源交付金が支払われました。農水産業以外に頼り、過疎化に悩んでいた町はまさに「長者原」に変貌します。原発は町にとって「希望のとびら」でした。

 大熊町の後、富岡町などを訪ね、帰路の途中、カーオディオからビートルズの「The long and winding road」が聞こえてきました。 小さい頃から聞いてきたビートルズの中でも大好きな歌です。日本語訳では「長い曲がりくねった道」で始まり、「私をあなたのドアに導く」と続きます。

閉鎖された福島第1への道

長い曲がりくねった道でも、希望のとびらは開く

 暗示的な歌詞が多く、何度聞いても理解できません。人生の道を歌っているのでしょうか。さまざまな試練を通り抜けながら、なんとか自身のめざす道へ向かう。その道に向かう人生のドアへ導いて欲しい。人気絶頂のころのビートルズの歌と違い、悲しいけれど慰め、勇気づけられる曲調です。曲の最後は「lead me to your door」。私をあなたのドアまで導いて。

 「時計を止まったままにする気持ちはわかる」と双葉町より先に避難解除した大熊町で出会った人が話してくれました。大熊町も町役場など新しい拠点を再建中です。「私たちはここから大熊町を作り直すしかない」と言います。私は答えました。「できることは町に来ることです」

 双葉町の「希望のとびら」は開き、道は見えています。

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