価格破壊の終焉 トランプ大統領は「I love the inflation」高市首相はどう発言?

「I love the inflation」。トランプ大統領が3年ぶりに4・2%まで上昇した5月の物価上昇率について問われた際、「インフレが好きです」と答えたそうです。

強がりのポーズを示す?

 高騰の引き金は自ら決断したイラン攻撃。ホルムズ海峡の閉鎖によって原油価格は急騰、これが引き金となってガソリンはじめ石油製品、物流費などほとんどの消費者物価に影響が広がっているからです。トランプ大統領は物価高騰による自身の支持率低下を心配しており、イランの戦争が終結すれば「岩のように沈む」と説明し、物価高騰は短期で終わると強調していました。だからこそ、あえて「インフレが好きです」と強がるポーズを示したのでしょう。

 しかし、誰も物価高騰がそう簡単に収まるとは信じていません。一度高騰した価格は、値上げが浸透する過程で固定化されてしまい、一時的にせよイラン攻撃が停止したとしても元に戻るわけがありません。米国民でさえ食料品や高級品の買い控えが広がっており、経済の先行きを悲観的に考えるのも当然です。ほとんどの人は「インフレは嫌いです」。

 米国は大統領が「インフレが好き」と強がる余裕があるかもしれませんが、日本の高市首相が「インフレが好き」と苦笑するギャグが通用するとは思えません。

日本は14%の値上げ

 なにしろ、値上げラッシュが止まりません。帝国データバンクによると、4月の飲食料品の値上げは2798品目。平均値上げ率は14%。値上げの規模は2025年10月以来の6ヶ月ぶりとなりますが、今後も値上げが途絶えることはないと覚悟するしかありません。

 直近の値上げの理由はもちろん、米国とイスラエルのイラン攻撃。エネルギーのほとんどを輸入に依存する日本にとって、産油国が集まる中東地域のホルムズ海峡が閉鎖されることは、喉元を占められたのと同然。米国よりも大打撃を受けます。プラスチックなど石油製品に欠かせないナフサなどの供給悪化で包装、印刷、塗料など産業資材の品不足が一気に広がり、値上げが加速しました。

 値上げの伏線はもう数年前からできあがっていました。円安です。ここ数年、1ドル150円を超える円安が続いており、原油、小麦や食用油など生活に不可欠な商品を輸入する日本にとって原材料をさらに高める引き金となっていました。帝国データバンクの調査を待つまでもなく、皮膚感覚でインフレの時代が日本に訪れているのがことを痛感しています。

 その円安は止まりません。財務省は4月末から5月末まで12兆円近い巨額を投入してドル売り円買いに努力しましたが、むしろ6月に入って1ドル160円台に突入して円安の気配は見えません。円安の主因は国の巨額財政赤字、経済力の衰退などが根底にありますから、為替介入で円高に転換するとは思えません。

 日本が直面するインフレは、輸入依存と円安という経済の二重構造によって高止まりする可能性が大きいのです。

価格破壊が個人消費を喚起

 改めて価格破壊の時代が終焉すると痛感しす。日本経済は1970年代、ダイエーなど大型スーパーが巻き起こした価格革命、言い換えれば消費者が驚く値下げを実現して個人消費を喚起、高度成長神話の原動力としてきました。1990年代に入ってもユニクロ、ドン・キホーテなど思わず買ってしまう価格の安さを前面に出す小売業が新たな主役に躍り出て、価格破壊の太鼓を打ち鳴らし続けました。今も消費者物価が高騰する時だからこそ、驚く値下げは効果的であり、小売業の競争力を高めるはずです。

 しかし、これだけ主要製品が値上がりしてしまえば、消費者に諦めが広がっています。価格破壊を訴える価格の底上げが定着していしまい、大幅値下げと銘打っても実質的に値上げした製品を購入するのが実態です。卵の価格が典型例です。

 価格破壊の終焉とセット販売される値上げラッシュ。個人消費が衰えれば、GDPも低迷します。日本の首相が「インフレが好きです」と皮肉でも言える日が訪れるのでしょうか。

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