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自民も公明も選挙ポスターは意味不明

自民党総裁選 カーボンコピー再び?いえいえカーボンがゼロ、政治にイノベーションは無し

 年金改革は今回の本論ではありませんので詳細は省きますが結論から言えば、現行制度で破綻しませんので受給できないなどの不信感は不要です。支給される金額の多寡については不満が発生するかもしれません。しかし、それは入社したばかりの新入社員が将来、部長になったら、役員になったらと考え、その時の年収を思い描くのと等しいのかもしれません。

 今の役員報酬を念頭に置いても、実際の報酬は自分が役員に就任する時の会社の業績、経済情勢に左右されます。未来の年収を正確に誰も予測できません。もちろん、右肩上がりの成長を期待して計画するわけですが全てがその通りになるわけではないことは皆さんが知っている通りです。

 以上の論点整理は慶応義塾大学の権丈善一教授の年金論にハマっているせいもあるかもしれません。議論の切れ味が素晴らしいです。読んでいて爽快感を覚えます。「年金制度が破綻する」「賦課方式が良いのか、積立方式が良いのか」などについても、国民年金納付率が60%と考えても厚生年金保険の納付率はほぼ100%で、被保険者全体での未納者は4%程度となるそうです。だいたいにして未納者は受給資格を失うので年金支給されません。

 未納自体が年金基盤に悪影響を与えません。賦課方式か積立方式が良いのかについても、今後の30年、40年後の経済状況を予測して自分で積み立てとしても受給時の経済状況を正確に予測は誰もできません。30年後の年金生活が始まったらベンツに乗ろうと考えて積み立てても、ベンツそのものがあるのか、とても安くなっているのか高くなっているのか、目の前に1000万円あったとしても30年前の思い描いたベンツ 生活ができるかは誰もわかりません。説明し始めるとキリがない、これが年金問題の一番の問題と思います。詳しくは「年金、民主主義、経済学」(慶應義塾大学出版会、権丈善一)を読んでください。

 最も大事なのは年金一点だけを議論するのではなく、生活保護など社会保障全体の枠組みから低所得者らの救済を考える視点です。ひとつ一つの論点で整理整頓するのは問題の所在を明らかにするために欠かせませんが、社会が抱える多種多様な課題を解決するためにはいくつもの政策が相互補完しながら目の前の問題を打開する政策が必要だからです。

 年金だけで長文になってしまいました。政治にはわかりすさが不可欠です。わかりやすからといって誤った議論を長々続けていては問題解決に向けて前進しません。河野太郎さんのキャッチフレーズは「日本を前に進める」だそうですが、年金改革の考え方をみている限りでは後ろを振り返って終わった議論を続けているようです。

 他の3人の候補は河野さんの問題提起に疑問を示していますし、野田聖子さんは「日本の年金制度は世界一信頼が高い」と反論していますからほっとしていますが。ただ、朝日新聞の記事で「河野氏の提案はタブーに切り込んだものといえる」と論評していますから、政治、メディアも含めて日本の少子高齢化社会への道筋の論議は今後も行ったり来たりを繰り返すのでしょう。

 岸田、高市、野田3人のみなさんの個々の政策について書き込みをしません。感想だけを言えば岸田さんは現状を一番理解して考えているのでしょうけど、ブレイクスルーできる政策を提示できない。優等生の論文を読んでいるようです。高市さんは安倍前首相の政策を踏襲しながら、なんとか打ち上げ花火的な話題作りを考えているようですが政治・経済政策ともに時代遅れです。昭和の政策論議を思い浮かべます。

 安倍前首相を踏襲しているだけに安全保障政策で中国を念頭にミサイル配備を充実する考えを明らかにしていましたが、不吉な予兆です。ミサイルを軸にした宇宙戦争は一瞬で終わります。国土面積を比較したらわかりますが、日本と中国でミサイル実射で競った場合、勝負は見えています。国民の命を考えたら日本の安全保障は実戦能力の高さを競うことではありません。戦争を避けるしか日本の安全保障はありません。野田さんはマイノリティーの視線を強調して個人的には好きですが、今回が最後の総裁選として手を挙げたイメージが強く残念です。

 じりじり低下している日本の政治・経済の力はこれまでの政策の結果です。それを今後も踏襲しようというわけですから、今後も右肩下がりの日本は続くことが明確にわかります。日本経済の活性化の切り札として「イノベーション」という言葉は今回の総裁選でも躍りますが、政治の世界にはイノベーションは念頭に無いようです。

 さて最後はやはりカーボンです。自民党の公式ホームページや新聞・テレビの報道を見る限り、カーボンの字句は見当たりません。野田聖子さんの政策チラシで触れられていますが、他の候補のチラシでは見つけられませんでした。カーボンニュートラルに対峙する日本の姿勢を見事にあぶり出しています。

 首相としての政策になると対外的に見栄えの良いものが欲しいのですが、首相になるための総裁選となれば党員の支持を得るために損得がはっきりわかる政策を示さなければいけません。カーボンニュートラルなんて票獲得につながらないという本音が明確に浮き彫りになっています。苦笑しかないです。

 次の総理大臣は100代目です。100代というと思わず松尾芭蕉の奥の細道の書き出しを思い出しました。「月日は百代の過客にして、行き交ふ年もまた旅人なり」 。百代過客とは、永久に止まらずに歩き続ける旅人のことだそうです。。または、年月を意味するそうです。「百代」は途絶えることなく何代も続いていく・・・。

 日本のリーダーのカーボンコピーはまだまだ続くのでしょうか。日本国民がコピー機から吐き出されるコピー紙を眺めている時間はそう長くないのです。そろそろ手書きを始めましょう。

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