地方統一選

福岡県議会「蔵内勇夫」私たちのすぐそばに、そして全国に

 金銭授受疑惑などに揺れる福岡県議会の蔵内勇夫議長が辞職しました。福岡県では麻生太郎元首相と並ぶ実力政治家で、「県議会のドン」と呼ばれています。

「県議会のドン」沈黙から饒舌へ

 久しぶりに「県議会のドン」を聞きました。福岡県に限らず都道府県など地方政治を仕切るドンはどこにでも存在します。

 直近の例では熊本県八代市の市庁舎建て替えを巡る談合事件に登場した成松由紀夫市議。「影の市長」とも呼ばれ、八代市役所の職員を前に机を叩いて威圧的な言動を繰り返し、恐れられていました。談合事件では改築を受注した前田建設グループから工事受注の見返りとして6000万円を受け取ったとして逮捕、起訴されています。

 ドンと呼ばれる人物は自らの権威を強めるため、寡黙を通すと思っていました。たまに口を開いたとしても、「自身の利益など毛頭考えことはない。地域のみなさんにいかに貢献できるかだけ」が決まり文句でした。

 最近のドンはどうも違うようです。福岡県議会のドン、蔵内氏は饒舌です。金銭拝受疑惑に関して無実と確信しているからでしょうが、県議の海外視察を「海外旅行」と表現したり、直近の海外視察を「ネパールは天国だった」とコメントするなど弁明する口調は明るく、滑らかです。「ネットで炎上して日本で一番悪い男」と笑みを浮かべて自虐ネタを飛ばすのも、SNSの時代の地方のドンらしい。

 もっとも、利権は手放しません。蔵内氏自慢の政策「ワンヘルス」は環境、人間、動物それぞれの健康を一体的に守っていく考え方ですが、既得権益も福岡県政と一体感を保っているのもドンの蔵内流の証なのでしょう。

「県議会のドン」を初めて目の当たりにしたのは1980年代の石川県議会でした。新聞記者3年生として赴任した金沢支局で石川県の政治、経済を中心に取材していました。石川県政は地元紙の北国新聞とコインの裏表のように密着して、県民の目に触れない陰で蠢いていましたが、もう一つ大きな陰の力が存在していました。

広島県議会の檜山県議はゼネコンの創業家

 石川県議会のドン、矢田富雄県議は北国新聞との癒着にも動じなかったようです。県議会の議場では最古参の県議として後ろの席に座り、一言も発しませんが、席から発する圧を議場内の自民党県議は背中で感じていました。

 矢田県議は通常、ほぼ一年交代の県会議長を1967年5月から69年7月まで2年以上務めています。蔵内氏は県議会議長を異例の2度就任しています。「県議会のドン」は「自分は別格」と周囲に知らしめないと気が済まないのでしょう。 

 20年後、広島支局長として赴任した広島県議会で目撃したドンはもっと露骨でした。檜山俊宏県議は県議会議長を2回どころか3回も務め、その期間も1991年から2003年までの12年間。

 父親の袖四郎氏も1963年から71年までの8年間、県議会議長を経験しており、広島県の政治で檜山一族が支配する権勢は矢田、蔵内両氏を上回るほどだったのでしょう。

 なにしろ、檜山一族が創業した広島市のゼネコン、鴻治組は広島県などの主要プロジェクトではいつも名前が出てきます。談合の噂が流れると、その仕切り役として囁かれることもありました。「県議会のドン」は建設、土木などの仕事を受注する際、大きな影響力を発揮する役立つ職務でした。

 檜山俊宏氏は2020年4月、自民党の河井案里参院議員の陣営による買収事件で、広島地方検察庁が檜山氏の事務所や広島県議会棟にある会派控室などを家宅捜索しています。「金銭の授受は一貫して否定する」と説明していました。

「県議会のドン」は、都道府県を問わずどこにでも存在します。県議は国政選挙も集票マシンとしてフル稼働しますから、衆参の国家議員もその権勢を無視することはできません。だからこそ、地方政治の主役である都道府県民の目から逃れ、暗躍するのです。福岡県議会で告発された現金授受は氷山の一角に過ぎません。

 2027年4月には統一地方選挙があります。地元の政治を改革する主役は有権者です。4年前の2023年4月23日に投票した政治家の言動を改めてチェックし、本当に地域貢献してくれる政治家に1票を投じましょう。

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