• ZERO management
  • カーボンニュートラルをZEROから考えます。
福島第一原発

電力は解体的出直しを 東京、中部の苦境を教訓に次世代のエネルギー産業に再生

 日本経済を支えてきた電力産業は一度解体し、出直すしかないのではないか。戦後から続く電力9社体制(沖縄電力を除く)は制度疲労といってよいのか、それとも電力電池切れと表現した方が適切なのか。自らの組織を再生できないほどボロボロになってています。これまで漠然と感じていた予兆は、中部電力の不祥事で確信に変わり、止めを刺した思いです。

中部電はデータ不正で社長、会長が辞任

 中部電力は9月14日、林欣吾社長と勝野哲会長の辞任を発表しました。浜岡原子力発電所を巡るデータを捏造する不正問題の責任を取った形ですが、不正の根源は組織に深く浸透した異常な企業統治と企業風土です。

 中部電は遅くとも2012年からデータ不正を行い、18年ごろに不正が拡大していたそうです。同日公表した調査報告書によると、データ捏造は当時の経営陣の叱責による現場に対する圧力が不適切行為を実行させた要因と判断。安全・安心を蔑ろにして原発の早期再稼働を最優先することを正当化する「極めて特異な考え方が一部に存在していた」と指摘しています。

 さらに深刻なのは「確信、ひいては信念すら持って不適切な行為を実行に移している可能性がある点で深い問題がある」「中部電力のほかの不祥事事案についても同じような考え方が根底にあるように見受けられるものもある」と続けています。調査報告書は再発防止策として企業風土の見直しやコンプライアンスに関わる人材の配置などを提言していますが、会長、社長の首を切ったからといって大きく変わるとは思えません。

 理由は明快です。電力産業全体に長年、組織に深く根付いてしまっている病巣だからです。2011年、東日本大震災で福島第一原発事故を招いた東京電力。社内外から緊急時の電源配置、津波対策などの指摘がありながら、経営陣は聞く耳を持っていませんでした。

電力の組織に根付く病巣

 世界最悪の原発事故を教訓に組織は大きく変わるかと思いましたが、見事に裏切られました。再稼働を急ぐ柏崎刈羽原発の現場で不祥事が続きます。IDカードの不正流用、テロ対策の不備などが次々と明らかになり、現場のモラル低下が心配されてました。なんとか6号機が再稼働したのは2026年4月。福島第一原発事故から15年後です。

 緩み切った経営陣では関西電力も負けていません。2019年、概要: 福井県高浜町の元助役から、関西電力の幹部ら多数が長年にわたり総額約3億7000万円相当の金品を受領していた問題が発覚しました。この時も社長、会長が辞任しましたが、その後も2012年から電源立地交付金をめぐる不正データの隠蔽も明らかになっています。

 今更ですが、原発は安全・安心が大前提です。しかし、東日本大震災以降の東京、関西、中部の電力3社の不祥事を見ると、安全・安心を託すことができるのか不安になります。

 しかも、経団連会長も務めた電力業界のリーダー、東京電力は2011年の福島第一原子力発電所事故で事実上、国家管理下にあり、2026年1月に発表した新たな再建計画で、外部資本を受け入れる提携戦略を盛り込みました。提携相手は国内外の投資ファンドやエネルギーに投資する事業会社や総合商社などが有力視されています。東京電力はほぼ解体です。

 中部電力は浜岡原発の再稼働が不可能となれば、経営をどう維持するのか。再稼働で見込まれていた2500億円の収益改善は吹き飛び、長期的なビジョンは描けなくなります。

原発の安全・安心を託せるか

 エネルギーを輸入に依存する日本は、原発をベース電源に太陽光、風力など再生可能エネルギーの拡充を急いでいます。東京電力、中部電力の経営が不透明なままなら、長期ビジョンは描けません。電力の自由化は名ばかりの民間参入が話題となりましたが、とても期待できません。三菱商事の突然の撤退で海上風力発電業の先行きが見えなくなったことを思い出してください。

 経済産業省は次代のエネルギー産業の形を検討しているのでしょうか。それとも人工知能に託した方が早いのでしょうか。日常生活、企業活動を支える電気をどう維持するかを考える時です。

関連記事一覧