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三菱自動車

「その場しのぎはそろそろ終わり」 パジェロの蘇りが三菱自の息切れを教える

 「パジェロ」が再登場します。かつての愛車ですから、懐かしいですし、うれしい。最大6人乗りのSUVでありながら、V6エンジンのパワーを放ち、まるで乗用車のようにしなやかに走る名車でした。シーカヤック2台、キャプ道具を積んで家族、友人と旅行した日々が蘇ります。

新車開発の力はもう皆無

 でも、2026年の「パジェロ」復活は素直に喜べません。三菱自動車がもう新たなヒット車を創り出せないと自ら吐露しているからです。

 三菱自は世界中でビジネスを展開する三菱グループの「スリーダイヤモンド」ブランドを冠しているとはいえ、自動車メーカーとしては東南アジアを中心に事業展開する中堅クラス。

 三菱グループの企業が好むと好まざるを問わず購入するため、自動車メーカーとして存続してきましたが、元々は世界市場で競う経営力はありません。1980年代から米クライスラー、独ベンツなど欧米メーカーと提携し、結局は三菱自同様、窮地に立っていた日産自動車の傘下に入ります。

 言い換えれば互助会のような提携関係です。優れた技術力とアイデアがあっても、投資余力はほぼ枯渇。三菱自にはもう世界市場でヒットをかっ飛ばす新車開発力が残っていませんでした。

世界初のEV量産化しても、中国勢に抜かれる

 例えば、「i-MiEV」。2009年に世界で初めて電気自動車(EV)の量産に成功しました。高い評価を集めたものの、三菱自の役割はここまで。EVパイオニアの座は米テスラにあっという間に抜かれます。その後、日産と一緒に軽EVを発売し、日本国内でヒットさせましたが、BYDなど中国製が席巻する世界市場では太刀打ちできません。

 話題を呼ぶ新車といえばワゴン「デリカ」、SUV「アウトランダー」、直近ではピックアップトラック「トライトン」。いずれも悪路に負けず、大人数の乗客、多くの荷物を積載できるアウトドア市場に照準を合わせた大型車が大半です。ライバルとは一線を画したマーケットで販売を増やしています。

三菱自動車

「デリカ」の次は「パジェロ」

マーケティング戦略も真っ向勝負を避けます。1990年代、「パジェロ」の成功に乗じて「パジェロミニ」など小型車や軽で派生車を次々と投入して売り上げを伸ばしましたが、今もワゴン「デリカ」のイメージを映した軽「デリカミニ」を発売し、スズキ、ダイハツ工業、ホンダのライバル軽と独自の戦いを演じています。

 そしてついに「パジェロ」の再登場です。最後の切り札とは思いたくありませんが、いよいよ「パジェロ」しかなくなったのかという気がします。

 確かに「パジェロ」のブランドは三菱自の価値を一気に高めました。 1982年に初代モデルが発売され、当時RV(レジャー用多目的車)と呼ばれたブームを牽引。ダカール・ラリーの活躍で三菱自のフラグシップモデルとして高い人気を集め、実用一点張りのトヨタ自動車「ランドクルーザー」とは全く異なる「ちょっとハイソなSUV」マーケットを創造しました。

 しかし、三菱自で相次いで発覚した排ガス規制などの不正行為、リコール隠しが引き金となって経営は窮地に転落します。「パジェロ」は2019年に終了しました。

 7年ぶりに復活する「パジェロ」が狙うのは以前と同じ高級SUVマーケットで、価格は700万〜850万円。エンジンはピックアップトラック「トライトン」と同じ2400CCの 直列4気筒ディーゼル。 加速力、4WDなど走破力はもちろん、乗用車並みの乗り心地を実現しているそうです。

高級SUVは大混戦の激戦区

 7年前と異なるのは高級SUVは、大混戦の激戦マーケットに変貌していることです。トヨタは「ランドクルーザー」を実用車から家族向けSUVに変身し、800万円前後の価格でも納車待ちが1〜2年以上といわれています。2000万円以上もするメルセデス・ベンツのGクラスも人気が衰えません。

 「パジェロ」はトップを走るどころか、後を追う立場です。話題は集めるでしょうが、販売台数はさほど期待できないかもしれません。

 それでも復活せざるを得ないのが三菱自の現況です。かつての人気車のカードを振りかざして、販売台数をなんとか嵩上げするしかないのです。

 「パジェロ」に続くカードは他にあるのか。なんとか目の前の難局を切り抜ける「その場しのぎ」の経営はもう息切れ寸前としか思えません。

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