
草間彌生さんとNHK「no art, no life」一心不乱に描く美しさにいつも感動
NHKのEテレ「no art, no life」が好きです。常識に縛られずに自身の描きたいテーマ、表現によって生み出す作家と作品が紹介されており、日本全国の独創的なアーティストが制作過程を通じて最高の時間を過ごし、大満足の表情を見せるシーンに感動します。
「アート作品の楽しさはその人の人生を感じること」。毎回、痛感します。
アートから人生を感じる
最大の魅力は、目の前に見える風景や人物などをそのまま描くのではなく、自身の目と脳で感じたイメージを描写していることです。自分自身も小さい頃から視力が弱かったせいか、人物や風景の細部に拘らずイメージで捉えていましたから、とても共感します。
高校生の頃、カンディンスキーの「ホワイトドット(白い点)」に心をギュッと掴まれてポスターを購入、以来50年以上も常に視界に入る場所に飾っています。白い点というタイトルにもかかわらず、さまざな線と曲線、色彩がギュッと凝縮。「白い点」の実像を見失ってはいけないと訴えるカンディンスキーにハマりました。
草間彌生さんにも当然のように引き寄せられました。有名な水玉をはじめ作品に現れる風景に全く違和感を覚えませんでした。ニューヨークに活動拠点を移し、男根をオブジェにした作品を展示したり裸でパフォーマンスを演じて「前衛作家」のシンボルとして持て囃された時は、むしろエネルギーがそろそろ尽きてしまうのではと心配したほどです。
幼い頃から幻聴や幻視に悩む草間さんがニューヨークから東京へ戻り、新宿の病院を自宅と決めてアトリエに通いながら、制作する日常生活を羨ましく思ったこともあります。姉が統合失調症を患った後、絵を書き続る生活を送っていたせいか、姉も真似できないかなあと考えたのです。

ワシントンのかぼちゃ
NYで蝋人形の草間さんと出会う
2012年7月、思わぬ出会いを得る幸運に恵まれました。仕事で訪れていたニューヨークを散歩していたら、高級ブランドのルイ・ヴィトンとのコラボレーションがニューヨーク5番街にある旗艦店で開催されていました。草間さんは当時、83歳。車椅子で登場。ルイ・ヴィトンの最高経営責任者(CEO)ら登場し、店全体を草間彌生の世界「インフィニティ・ドット(無限の水玉)」に染め上げました。
セントラルパークに面したウインドウには草間さん本人とそっくり精巧な等身大の蝋人形が設置。 触手のような有機的なオブジェや、水玉模様のパンプキン、そして無数のドットに取り囲まれていました。
ガラス越しに草間さんが立っています。周囲の目は釘づけとなり、私も一緒になって注視しました。蝋人形とは知らず、本人のパフォーマンスと思い込んでじっと草間さんの瞳を直視していたら、眼球が右左に動きました。一緒に眺めていた隣の女性は「私にこんなパフォーマンスはできない」と恐々と離れていくほど迫力がありました。
今でもあの時は、本人だったのではないかとふと思いますが、やっぱり精巧な蝋人形だったはずと納得することにしています。
過去、現在、未来を描き出す
本人と見紛うほど一心不乱に見据える瞳の力を忘れることができません。この力を秘めているからこそ世界を魅了するアート作品を生み出し続けることができたのでしょう。その後も、ワシントン、瀬戸内の直島の「かぼちゃ」、展覧会と機会があるたびに草間さんの作品に会いましたが、ニューヨークでの感動を上回ることはありませんでした。
草間さんにいつも感動するのは一心不乱に制作する姿勢です。過去、現在、未来、自身の人生すべてを描き出そうとしています。
「no art, no life」って素晴らしい。永遠の時を紡ぎ続ける力と信じています。

