ポカラのバス停留所前

ポカラで村上春樹の「世界の終わり」の脱出口を見つけてしまった。ナマステ ②

ネパールを旅行する時はいつもそうです。最近の治安は知りませんが、当時のネパールは盗まれたり騙されたりすることはあっても、殺されることはないと思っていました。

カトマンズでも数多くのホテルを訪ね、「今夜は一泊いくら」と聞いて決めていました。まして当時のポカラはネパールの有力観光地として知られていたとはいえ、泥道を8時間もバスで揺られていく旅行客はかなり物好きの部類に入ります。

すでに日本企業の投資話を聞いていましたが、ホテル建設などの施設整備は手付かずです。ポカラを気に入ったら1週間ぐらいは滞在しようと思っていたので、ひとつ一つ自分の目で見て、財布の中身と相談しながら決めるつもりでした。

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「ノルウェーの森」が通奏低音に

村上春樹さんの小説の中で「すごいなあ」と感動したのは「ノルウェーの森」でした。最初に読んだ「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」はストーリーの情景が思い描けずに最終章までたどり着き、ドボンと結末が終わった読後感でした。

村上春樹の世界がまだ霧に包まれたままです。五里霧中ではありませんが、もともと近視と乱視が強いこともあってか、目の前に小説に書かれている文字を追っても物語がよく見えないのです。

でも、わからないなりに読み終わった時の余韻がこれまで読んだ小説では感じられない味わいがずぅ〜と続きます。尾を引くとはこういうことか、という感想ですね。その尾を引いている頃に発表されたのが「ノルウェーの森」でした。

1987年9月の発刊です。大ヒットした小説ですから物語の要旨は省きます。確か主人公は大学へ進学し、和敬塾をモデルにした寮生活から始まります。場所は目白近辺ですよね。学生時代、友人が同じ目白のアパートにいました。

そこを根城によく飲んでは寝ていました。自分自身のアパートはJR中央線の阿佐ヶ谷です。タクシー代なんて払えるわけがないので、夜遅くまで飲んだら目白に雑魚寝です。彼の実家は裕福だったので、もし彼のアパートにお酒があったらご馳走様です。和敬塾にも思い入れはあります。

この寮で生活をしていた会社の同僚がいたのですが、やはり右翼系です。というか体制派ですか?上昇志向が強く、政治が大好きです。「ノルウェーの森」に登場する先輩とそっくりです。かなり身近に感じます。

ただ、この小説がダイレクトに胸を打つのは精神病を扱ったことだったかもしれません。主人公の恋人は精神的な病に陥り、そこから物語は広がります。

私の場合、姉が20歳代後半から精神的な病を抱え、私も二十歳ごろから精神病に関する書籍を読んでいました。東京のアパートで次兄と姉と3人でアパートに住みました。4畳半と6畳の2間のアパートでした。姉は普段はいつもの姉なのですが、夜になると違う人格になってしまうのです。高校を卒業して大学進学のために上京した私は18歳ぐらい。怖くて布団を頭から被って知らん振りしたことは何度もあります。でも、それでは姉を救えないと思う後悔を重ねます。

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