旭川にもタワマン、北海道の不動産ブームの不可思議　かつての水資源を彷彿

　1年ぶりに北海道の旭川市を訪れたら、びっくりしました。タワーマンションが建設されていたのです。都市開発も予想以上に活発で、その変容ぶりに驚きます。

旭川駅前に２５階建てのタワマン

　タワーマンションは旭川駅北口の目の前。建設地はフェンスに囲まれていましたが、２年後の２０２５年２月に地上２５階１５１戸のマンションが完成するそうです。すでに順調に売り出されており、最高価格の３億５０００万円の部屋は売却契約が決まっているそうです。失礼ながら、信じられません。なぜって、旭川にタワーマンションの需要があるとは想像もしませんでした。

　旭川駅前北口は、買物広場が広がり、街の活性化策の成功例として注目されていました。しかし、人口減や地域経済の不振などで百貨店などが撤退。札幌に次ぐ北海道第２の都市として将来を危ぶむ声もありました。１０年以上前、旭川市は繁華街が集まる北口エリアと逆に広野が残っていた南口エリアの開発が始まり、街づくりの再配置が始まっていました。しかし、地元の建設会社の社長でさえ「公共工事が増えるのは歓迎だが、思惑通り街が生き吹き返すのかなあ〜」と首を傾げる声を聞いていました。

教育、医療、自然など社会インフラは抜群

　旭川市にはほぼ毎年、訪れています。買物広場はスクラップ・アンド・ビルドが進み、街並みが変わり始めています。北口で完成した大手スーパーの商業施設は当初、「違和感が消えない」と苦笑する市民が多かったのですが、今はとても賑わっています。

　ゼネコンでさえ疑問視していた南口エリアも大規模な施設などが次々と完成し、人も車も増えています。そして２０２３年１月にタワーマンションの建設工事を目撃しました。

　旭川市は病院、教育など社会福祉全般が高いレベルであるうえ、空港も近い。札幌市へもJRで１時間半程度。すぐ近くには大雪山系の大自然があり、四季を堪能できます。社会的なインフラが優れているのですから。東川町など周辺の自治体を含めて移住する人が増えているのがうなずけます。

札幌以外は人口減が加速

　しかし、旭川市の人口は増えていません。２０２３年２月１日現在で３２万３７８１人。世帯数を見ても１７万７４７８世帯。いずれも減少しています。北海道全体でみても、札幌市を除けば人口減のスピードは加速するばかり。除雪などの手間が省けるマンションに戸建てから移る傾向が広がっているものの、億単位のタワマンを購入する富裕層の裾野が北海道で広いとは思えません。

　それでは誰が買うのでしょうか。やはり札幌市が先進事例として参考になります。もう１０年ほど前に都心の大通り公園にタワーマンションが完成しました。ついに札幌市でもタワマンができると話題になりました。購入者の詳細は明らかになっていませんが、完成後は夜になっても明かりが灯らない部屋が目立つことが伝わってきました。購入者の４割程度が北海道以外ともいわれていました。

海外資本による投資が拡大中

　北海道は中国などアジアの観光客から大人気です。しかも、北海道新幹線が函館から札幌市へ２０３０年ごろに延伸することが決まり、札幌の資産価値はさらに高まるのは確実です。札幌駅前北口エリアでタワーマンションの建設構想が相次いでいるのも当然でしょう。

　日本の不動産は中国、シンガポールなどアジアから投資対象として購入されています。東京２３区内はその高騰ぶりから「普通のサラリーマンには手が出ない」との声をよく聞きます。

豪州やNZでも同じ声を聞く

　同じような声はオーストラリアやニュージーランドでも聞きました。中国など海外からの不動産投資が舞い込み、「シドニーやオークランドなど中心都市で若者が住めなくなっている」というのです。

　タワーマンションの林立が北海道経済に貢献するなら大歓迎です。基幹産業の農水産業は、エネルギーや輸入農産物の高騰で厳しい経営に追い込まれています。もう一つの基幹産業である観光も、海外客への依存度を増しています。冬季のスキー場へ行くと、日本人よりも海外のスキーヤーが多い印象を受けるほどです。

キロロは中国資本の傘下に

　すでに北海道の大手スキー場はアジア資本に買収され始めており、直近でもキロロも中国資本の傘下に入るとのニュースが流れました。

　まるで水資源の買収が相次いだ２０１０年代を思い出します。海外資本による北海道の土地買収が相次ぎ、貴重な水資源の確保を危ぶまれました。北海道は２０１２年４月に「水資源保全に関する条例」を施行し、対策に乗り出しました。

　不動産取引に無駄な規制を加えるのは無用です。ただ、人が住まない、あるいは投資目的だけでタワーマンションが乱立するのは避けてほしいです。中国の地方都市を見てください。誰も住まないマンション群が立ち並ぶ地域経済は活性化していますか。