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春闘、先送りの経営改革・・・足踏みを続けた34年間のすべてを捨てる時

破壊を恐れずに改革に挑む

 日経平均が34年ぶりに過去最高値を突き抜けました。長かった。遙か遠くに見えた3万9000円を超えた高揚感が漂っていますが、ようやく34年前の水準に戻っただけ。東証株式市場に勢いが出ているのはうれしいですが、日本経済の活力が蘇っている証左ではありません。経済成長、年収は足踏みが続き、日本の実力は欧米やアジアの国・地域の背中を追う立場に転じています。34年間から学ぶ教訓は、大国・日本と自惚れた軽率さを忘れずに「破壊を恐れず改革に挑み続けること」です。

機能不全の春闘

 株価が史上最高値を突破したとはいえ、日本経済の実相はあちこちで機能不全に陥っています。例えば春闘。日本的経営と呼ばれ、安定した労使関係の象徴でしたが、すでに崩壊寸前。2月下旬に労使交渉を開始し、自動車、鉄鋼、機械などの大手企業が3月中旬に設定される集中回答日にそろって提示するのが通例でしたが、早々と満額回答するのが恒例となってきました。

 今年もホンダとマツダが早々と満額回答しました。両社とも好業績を記録しているうえ、カーボンニュートラルをにらんだ自動車の電動化など「100年に一度の大変革期」に備え、優秀な人材の維持・確保などが急務になっています。

マツダの満額回答は経営改革の結果

 日本の平均年収はほとんど増えていません。春闘で長年、大手は賃上げしても、中堅・中小企業は大手並みの賃上げ率を払えず、年収格差は広がっていました。雇用の4割を非正規の従業員が占め、年に1回の賃金交渉の波及効果はさらに薄まっています。3年連続して満額回答するマツダも経営再建に苦しむ期間が長く、広島県など地場の企業に支えられてきました。

 マツダの3年連続の満額回答は長い経営改革に耐えた結果です。だからこそ「地場の取引先の生活を守りたいという思いで決めた」と竹内都美子執行役員は広島県など取引先企業にも賃上げが広がることを期待しています。地域に大きな影響を与える自動車メーカーが取引先の年収増も念頭に大幅賃上げするのは、大きな変革です。中堅・中小への賃上げの波及効果は今度こそ期待できるかもしれません。

 働き方も多様化してきました。コロナ禍によるリモートワークの経験もあって通勤やオフィスでの勤務など従来の常識が覆されたほか、サービス残業が当たり前だった労働時間の管理はもう通用しません。終身雇用制度に代表される人事考課もとうに役割を終え、職種やスキルによって賃金や昇進が決まり始めています。

日本の評価は軒並み右肩下がり

 労使が毎年春にイベントとして賃金や雇用体系を討議する発想のままでは、優秀な若手が流出し、企業基盤そのものが崩れる恐れもあります。春闘はもう今年限りで終幕にしましょう。

 春闘は一例に過ぎません。日本経済の実力をランキングする指標がよく話題になります。指標化する調査などに疑問がありますが、一つの目安としてみると、国際競争力など多くの指標で1990年代から右肩下がりが続いています。社会の活力をみても、女性の活躍度合いは世界でも最下位グループ。大学の研究レベルも中位へ。

ESGと謳ってもセクハラするエネオス

 経済の柱である企業経営の改革はようやく始まったばかりです。成長分野に向けた事業の再構築、ESGなど企業統治なども含めた経営改革は以前から指摘され、経団連はじめ経営者自ら鼓舞する発言は連呼されてきましたが、その実態は看板を書き換えたものの、看板の裏側を覗くとなにも変わっていないのが実情。石油大手のエネオスの経営トップがセクハラを理由に何人も辞任する事例が続くのも、経営改革を先送りしている証左。経営改革の実態を表す「氷山の一角」に過ぎません。

 裏金問題の渦中にある自民党が「改革先送り」のわかりやすい実例かもしれません。政治資金の取り扱いに熟知しているにもかかわらず、抜け穴を使って不法な行為を続ける。安部派一強と権勢を極めていた時には裏金の影も見えませんでしたが、権力の座から降りた今だからこそ、その実態が暴かれただけです。周囲の政治家や関係者はそのやり口や存在を知っていたはずです。

暴かれるまで是正しない

 実態が暴かれるまでは、是正しない。自民党、政治の世界だからと批判するわけにはいきません。企業経営はもちろん、地方行政、社会の序列など旧来の陋習に縛られているのが日本の現在の立ち位置です。

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