
日産 昨年は社長、今年は社外取締役 クビ連発で赤信号が点滅する企業統治は前進できるか
日産自動車。相変わらずエンスト気味ですが、機能不全に陥っている企業統治は少しづつ前進しているようです。いや、電気自動車(EV)に注力していますから、バッテリーの充電不足と表現した方が良いかもしれません。本来なら、もう消費期限切れのバッテリーを全交換すべき時期です。騙し騙し使い続けるかぎり、日産の復権はありえません。
永井氏の再任は否決
6月23日に開いた定時株主総会で12人の取締役候補が提案され、社外取締役8人のうちメインバンクであるみずほフィナンシャルグループ出身の永井素夫氏(元みずほ信託銀行副社長)の再任案が否決されました。否決はかなり異例な出来事です。
米議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)などが選任案への反対を推奨していました。永井氏と同じみずほ出身の真保順一氏(元みずほ総合研究所副社長)が新たな社外取締役候補になったこともあり、社外取締役の独立性が失われていると判断したのです。日産の15%の議決権を持つ大株主である仏ルノーも初めて永井氏の選任案を棄権したそうです。
永井氏は2019年から7年間、監査、指名、報酬の3委員会に所属し、監査委員会では委員長を務めていました。再任されれば、引き続き3委員会に所属する重要な役割を担っていました。これまで10人だった社外取締役を代表する人物です。
日産は赤字の池にハマり、存続の瀬戸際に立っています。2026年3月期で2期連続の巨額赤字を計上した危機の責務は前期に交代した内田誠社長ら経営陣が負うべきですが、執行業務を監視する社外取締役の責務も見逃すわけにはいきません。
なにしろ、2020年2月に就任した内田社長は臨時株主総会で「経営が改善しなかったら、すぐに私をクビにしてください」と宣言していたのです。自らの覚悟を振り翳して大見えを切ったにもかかわらず、企業業績は悪循環を繰り返し、日産はフラフラに。永井氏ら社外取締役は内田社長ら経営陣のクビを切るどころか、結局は破談となったホンダとの経営統合を後押ししたともいわれています。
とても笑えませんがホンダと経営統合で合意する最終局面、内田社長はホンダが日産を「バカにしている」と言い出して御破算に。取締役会はホンダとの協業などを含めて1年以上もいったい何を議論して決定したのか。日産の社員からみれば、おもしろくもない悲喜劇を見せつけられ、社外取締役を巻き込んだ経営の機能不全に目を覆うしかなかったでしょう。
「社外取締役、自ら犠牲にになる気持ちが・・・」
NHKによると、今回の株主総会に出席した株主から厳しい声が出ています。「社外取締役は自らの犠牲のもとに会社を立て直すという気持ちが感じられず、株主としては憤りを覚える。ことしが正念場になる」「社外取締役の数が多すぎて、日産のために働く社員が頑張れば自分も上に上がることができるような体制になっていないと感じる。経営体制の抜本的な改革が必要だ」。
日産の株主総会は経営学の教科書通り、機能を果たしています。株主の多くが日産の将来を真剣に考え、批判しています。昨年の2025年6月の株主総会では内田誠社長をようやくクビに。ただ、個人的にはそれでも納得できませんでした。経営責任の一端を担う新車開発責任者だったイバン・エスピノーザ氏が社長に就任。無為無策の内田社長を5年間、監視してきた社外取締役全員を再任されたからです。
みずほと共に危ない橋を渡り続ける
今年の株主総会でみずほ出身の永井氏がクビになりましたが、日産の企業統治にはまだ不安は残ります。2026年6月の株主総会後の社外取締役7人のうち4人は再任で、新任は小路明善氏、真保順一氏、ジョイ・グリーンウエイ氏の3人。小路氏はアサヒグループホールディングス会長、グリーンウエイ氏はGE、ユナイテッド・テクノロジーを経てGMのCFOを務めるなど製造業の専門家で、経営の実務に長けています。ところが、真保氏は永井氏の再任否決の理由であるみずほ出身ですから、適任かどうかの疑問は残ります。
もっとも、日産のメインバンクのみずほは、みずほ出身者を社外取締役に送り込むことに批判が湧き起こることはわかっていたはずです。それでも永井、真保両氏を候補者に押し込んだのは、かつて日本興業銀行が日産の経営を掌握したと同様に、みずほがこれからも命運を握り続けることを誇示するためでした。
1990年代から経営危機と経営再建を繰り下してきた日産。「誰が責任を負うのか」があいまいな企業統治が続き、みずほと共に危ない橋を渡り続けるのでしょうか。

