補正8兆円をドローンマネーに ガソリン・電気に補助せず好きに使って省エネ加速

 令和4年度補正予算の第2号が臨時閣議で決定しました。寺田総務相の辞任騒ぎで霞んでしまいましたが、高騰する食料品やガソリン代、電気代などを補助する補正予算が動き始めます。

物価高騰に7兆8000億円

 目玉は3本柱。物価高騰などの対策費は総額7兆8000億円。円安を活かした地域の稼ぐ力に3兆5000億円。さらに新しい資本主義の加速に向けて5兆5000億円。「地域の稼ぐ力」や「新しい資本主義」に目新しさはないので、最も力が入っているのは物価高騰対策でしょう。

 電気代の値上げに2兆5000億円、都市ガス代に6200億円、燃料油激変緩和措置に3兆円がそれぞれ投入されます。燃料油とはガソリン代。ロシアによるウクライナ侵攻も手伝って高騰した原油価格をそのまま石油元売り会社がガソリンスタンドの小売価格に転嫁しないよう補助する資金です。電気代、都市ガス代にも巨額の予算を充てました。すでに日常生活のエネルギー価格は相次いで値上げしていますが、来年春以降は一段と値上げ幅が引き上げられる見通しです。こちらもガソリン代と同様、日々の電気・ガス代の支払い料金が一気に上がらないように投入されます。

相次ぐ値上げは長期化する可能性も

 多くの消費財の値上げが続いていますから、ガソリン、電気、ガスの値上げ抑制の政策はとても助かります。しかし、現在の資源高はあと一年で終わりがみえる状況ではなさそうです。地球環境への宿題も残っています。気候変動に合わせた温暖化ガス削減をちゃんとやり遂げるためには、2030年ごろまでにエネルギー消費を抑える具体的な施策を実行するしかありません。そのためには斬新なアイデアと実行力が急務です。

日本はアリかキリギリスか

 アリとキリギリス。いまさらイソップ寓話を思い出すこともありませんが、エネルギー資源を輸入に頼っている日本は、5年、10年の単位で省エネ構造を改革する必要があります。目先のガソリン代や電気代が割安になっても、1年後に2〜3割も上昇したらガックリしてしまいます。しかも、従来と変わらない価格のままなら、ガソリン代や電気代を節約する意欲もアイデアも湧きません。長期的な視点に立って考えれば、割高なエネルギーを使用する苦しみを先延ばしているだけです。

 辛くても、気長に高騰する原油や天然ガスをうまく使用するアイデアや制度を捻り出し、孫の代に感謝されるエネルギー対策を今、打ち出すのが賢い選択です。

マネーをばら撒く、ヘリコプターじゃなくドローンで

 そこで提案です。ドローンマネーという考え方はどうでしょうか。景気対策としてヘリコプターマネーという考え方があります。中央銀行か政府が国債買い入れなどで大量にお金を供給し、個人消費などを刺激、景況感を回復する金融政策です。まるで空を舞うヘリコプターからお金をばら撒き、濡れ手に泡のように手に入れたお金を消費させ、沈滞する経済に活力を与える。野放図なお金のばらまきは倫理的におかしいと反論する経済学者もいます。

 しかし、環境と財政学を専門とするある大学の先生が主張していました。お金を自由に使わせれば、ガソリン以外に消費することもあり、結果的にエネルギー消費を抑える行動に出る。言い換えれば、高騰するガソリン代や電気代などにお金を支払うよりも、車のドライブを諦め、また電気使用量を抑えてでも欲しいものにお金を回す消費行動を呼び起こすことができる、と。

好きな消費のために省エネに努力するかも

 消費者本人は我慢するのではなく、納得して省エネに努力するわけです。本人が本気で実行するのですから、当然その成果も大きい。ただ、ヘリコプターマネーはあまりにも範囲が広すぎるので、狙い通りの消費行動を引き出せるか不安です。

 ヘリコプターの代わりにドローンはどうですか。ピンポイントでお金をばら撒くには、少しはきめ細かく設計したいものです。ちょっと手垢がついていますが、例えばコロナ禍の消費刺激のために採用された地域マネー。自治体独自に実施する動きがすでに始まっていますが、国が主導して自治体が自らの実情に合わせて予算の細部を決めて実施する。補正予算で計上した8兆円近い資金を振り向ければ、かなり使い勝手も良いですし、満足感も覚えます。

令和の地方創生でアリもキリギリスも幸せに

 かつて地方創生の名目で1億円をすべて自治体にばら撒いたことがあります。当時はちょっと無駄な使い方が目立ちました。今なら、大盤振る舞いとの批判も景気付けに良いのではないでしょうか。アリとキリギリスの寓話でも、最後はアリはキリギリスを救ってお互いに報われます。日本国民が稼いで貯めたお金は、みんなでうまく使いましょう。

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